歴史上最高の脱獄劇(3/8) エースがまだ来る様子もないのに… スケジュール前倒しになって、もう処刑されるとか? どっちにしろ、ここから処刑場への足が重い事には変わりはない。 「…処刑場とやらは、近いの?」 「公開処刑場は少し遠いが、お前は未公開処刑となっているから同じ建物の中だ。」 ゆいの腕と壁とを繋ぐ鎖の鍵を解く。 だが重傷を負っていて、それに加えて海楼石で自由に力を出せないゆいは、今は大人しい人形だ。 海軍兵数人に囲まれながら、あえてゆっくり歩いた。 できるだけ時間を稼ぎたい。 エースが向かってきてくれていると言うのなら… だがここはマリンフォードだ。 いくらエースでも、海軍大将が揃うこの土地に、堂々と入れるわけがない。 できる限り警戒をしながら、建物内を歩いた。 「おい、さっさと歩け!」 明らかに遅いゆいの歩きに苛々したのか、上司はゆいを怒鳴った。 ゆいは足が痛そうな演技をする。 「すいません…黒ひげの首をとった時の戦いで足が…」 足から流れる血ではないが、流れる血が建物の床を汚していた。 これはゆいがゆっくり歩くことで血に靴の型を付け、確実に自分がどちらへ行ったかを、来たエースに知らせるための細工でもあった。 ガープさんが言ったんだ。 エースはきっと来る…! 「チッ…まあいい。 どうせ死ぬ身だからな。」 そう言った上司を一瞬、鋭い目で睨みつけた。 その場で腰が抜けた上司は尻餅をついた。 ゆいはそれに目も留めず、ゆっくり歩く。 「貴様ッ! 能力も使えないただの女が!」 全て無視するゆい。 ゆっくりと歩いた末にたどり着いた立派で重そうな鉄の扉。 その中へと誘導される。 血の臭いが篭った、気持ち悪い部屋だ。 暗い窓のない部屋に、薄暗い照明がついていた。 真ん中には土台があった。 血の滲んだ土台に、槍を持った2人の男がいる。 「予定より1日早いんじゃないですか?」 顔色1つ変えずに聞くゆい。そうすれば、この場で1番なお偉いさんだと思われる人がゆいの返事をした。 「未公開処刑とは、日が遅かろうが早かろうが世間に回る事はないからな。」 …つまり、1日早く処刑されるという事なのか? なんていい加減な理由なんだ。 世間に知れなかったらいいのか? それに、これじゃあエースが間に合わない気がする。 ← | → |