歴史上最高の脱獄劇(2/8) 「だけど親父、エースはマリンフォードに向かってるとは限らねぇぞ?」 そんな言葉が飛べば、また白ひげは笑った。 「グララララ、エースならとっくの昔から航路変更してらァ。」 「なッ、マジっすか…っ!」 「さすがエース隊長!」 「嫁さん候補盗られたのがだいぶ悔しいんだな〜!」 「野生の勘って奴がビビッとじゃないっすか?」 ゆいが助かった前提で盛り上がるクルー達。 そんな浮かれたクルーに、マルコは苦笑しながらため息を零した。 「お前らな…まだ何も起きちゃいねぇのによい、」 「なに言ってるんっすか! エース隊長を信じましょうよ、マルコ隊長!」 確かに今更神頼みしたからといって、自分がマリンフォードにすぐにワープできるわけでもないし、エースの背中を持ってやる事だって不可能だ。 つまりエースの強さとゆいの運の良さを信じるしかない。 新聞記事には、ティーチが人食い花に食われている写真が付いていた。 間違えなくゆいの能力だ。 となると、ゆいは少なくとも傷は負っているはずだ。 その状態で、2日以内に脱獄しろだなんと無茶苦茶だ。 となれば、やはりエースに限る。 奴が誰よりも仲間想いなのは知っているし、誰よりもゆいの事を想っているのも知っている。 男にとって、今がまさに譲れない時と言えるだろう。 航路変更されたモビーディック号で、不安ながらも皆はエースに全てを托すのであった。 気付いてから丸1日経った。 エースがここに来ている、そう思えば何だか申し訳なく思えた。 自分で勝手に出ていって、自分の所為で捕まったのに。 でも、何故か来てほしい…だなんて心のどこかで思っていた。 エースは来る、 今も何故かそんな根拠もない事が言い切れる。 1日目が終わろうとした時、重たい扉の音がした。 また誰かが入ってきたのだろう。 不思議とそれは、エースではない事がわかった。 数人の足音は、ゆいの牢獄に入ってきた。 見るまでもなく、海軍の下っ端とその上司1名。 「脱獄のゆい、これよりお前を処刑場へと移動させる。」 早くないか? まだ丸1日はあると思うけど…? ← | → |