脱獄常習犯 | ナノ

あなたのため、わたしのため(5/6)








だが、それから数日が経ってもゆいの姿を見かける者は誰ひとりいなかった。

胸騒ぎが、現実になったエースは親父さんと相談して、鍵のかかったゆいの部屋を開ける事にした。


開ける前から分かっていた。
ゆいはこの船にはいない。



不安と苛立ちで、ゆいの部屋の扉を燃やした。

マルコに怒られたが、そんな中で入ったゆいの部屋は変な空気だった。



ここ数日、誰も入ってないような雰囲気だ。



「おいエース、これ見ろよい。」



マルコから差し出される1枚の紙。

そこには…



「…ちょっとお出かけ、ちゃんと帰って来れると思うから心配しないで、」



エースは動揺を隠せない表情でマルコを見た。

引っ掛かる文字があったのは、2人共気づいている。



「帰って来れるって…」



「ああ、あいつ…行ったんだよい。」



きっと黒ひげの所へ。


そんな空気のこの部屋に、一人のクルーが慌てて入ってきた。

どうやら緊急事態らしい。



「てぃ、ティーチの居場所が解ったから、隊長は今すぐ会議だそうです!」



「なにっ!?」



すぐに会議へと向かう。

この船に情報が回ると言うことは、ゆいはもうティーチの居場所へと向かっているはずだ。


くそっ、と言うエースの声、深刻そうな顔をするマルコ。



親父の場所へ集まった隊長達は、新聞を広げた。



「ここんところ、ずっと南で暴れているらしい。」



「航海師に言って、とっくに航路変更している。」



地図の周りを取り囲む隊長達。

白ひげはエースの顔を見て、言った。



「ゆいの部屋は空だったんだなァ?」



「ああ。
窓が開いてて、置き手紙があった。」



エースは置き手紙を地図の上に置いた。

その文字を見て、眉を額に寄せる隊長達。



「先に行ったんだ、」



難しそうな顔のエースだが、ふとあることを思い出す。






 








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