あなたのため、わたしのため(4/6) そう、自分は能力者だ。 木でできたものなら、と窓の外に放り投げた。 ジャポン…と海に椅子が沈んだ音が聞こえる。 窓から顔を覗かせるゆい。 すると、ゆいの視線の先には木でできた小船が浮いて来る。 先程の椅子に木を生やし、変形させたゆい。 「よし、我ながら完璧!」 これがニョキニョキの実の能力。 植物を全般に操れる。 木製でできた窓枠の隅を少し毟った。 木の破片をギュッと握り、手を緩めれば大きな綿毛になる。 種の部分をしっかり持ち、ゆいは窓枠を強く蹴って海へと飛んだ。 「いってきます…っ」 風のない日で、綿毛はゆっくりとゆいを揺らしながら小船の元まで飛ぶ。 「よっと…」 無事に先程の椅子でできた小船に乗る。 大きな陰となるここは、振り返ったモビーディック号の日陰なのだ。 こうして見れば、すごく大きい。 名残惜しくない、と言えば嘘だが、ちゃんと帰って来ようと自分に言い聞かせた。 船の底に手を当てれば、林檎の木が生えて来る。 ゆいはそれを日陰に、船を黒ひげが最後に現れた南へとグランドラインを進む。 「ゆい〜、親父の説教で遅くなっちまって……って、あれ?」 帰ってきたエース、 今さっきまでゆいと一緒にいた部屋には誰もいない。 トイレか? そう思い、待って見るも全然帰って来ない。 おかしい。 迷子か? そう思い、エースは船中を探し回る。 食堂、武器倉庫、医務室、親父の部屋、ゆいの部屋…その他色々、ゆいの行きそうな所を探したが、どこにもいない。 何だか嫌な胸騒ぎがした。 そうである訳はない…そう自分に言い聞かせながら、目の前に見えるマルコに声をかける。 「マルコ、」 「なんだよい。」 「ゆい知らねぇか?」 「ゆい?」 首を横に降るマルコ。 少し焦っている様子なエースに、マルコは苦笑しながら言った。 「お前、ほんと好きだなぃ。」 「っるせーよ、」 「まあ見かけたら教えるよい。」 「サンキュー!」 それじゃ、とエースはまた走り去った。 全く忙しい奴だ。 ゆいの事に関しては。 ← | → |