脱獄常習犯 | ナノ

解放されたわたし (5/6)








「マリンフォードに送還される1週間前に、ゆいが逃がしてくれたんだ。」



ゆいは座っている白ひげの前、痛そうな頭を摩るエースの横に座る。


白ひげの、その大きな姿に驚かないのは、ゆいが以前彼に会っていることをちゃんと物語っていた。



「グララララ、久しぶりだなァゆい。」



「うん、久しぶり。」



「息子がどーやら、とんでもねェくらい世話になったらしいじゃねぇか。」



「わたしもエースに逃げるまで世話になったから、お互い様だよ。」



「んな事でお互い様だとは白ひげの名も廃るってもんだ。」



グララララ、とまた笑う白ひげ。


どうやらお礼をされなければいけない、という状況らしい。



「ゆい、俺の娘にならねぇか?」



「え…!?」



白ひげの唐突な一言に、ゆいは戸惑う。


隣のエースを見れば、エースもゆいを見てニカッと笑った。



「俺らの仲間になれよ!」



「…でもわたし、今は能力者じゃないしっ」



足手まといだよ、と言い切るゆい。


見れば、ゆいの左腕にしっかりと嵌まっている海楼石。

今は普通の人間だから足手まとい。



だが世間に出ていけば賞金首であるゆいにとって、住み心地の良い世界はどこにもない。


あたたかい声を掛けてくれる民衆はいるものの、やはりゆいの敵である賞金稼ぎや海軍もうじゃうじゃといる。



能力が使えないのなら、尚更放っておく訳にはいかない。



ただでさえ命の恩人であるゆいには、自分を脱獄させた事により懸賞金が著しく上がったところだ。

そんなゆいに、自分のせいで辛い思いをさせたくないエース。



白ひげの目に付いたゆいの左手首。そして、ゆいに言った。



「ちぃと手首、見せてみろォ。」



左手首であろうか。

何をする気だろう?



とりあえず、ゆいは恐る恐る左手を白ひげの目の前に出す。



「海楼石だなァ。」



白ひげの、人のものではない様な大きな手は、掴んだゆいの細い手首をまた一段と貧相なものに見せる。



手錠に触れれば、物凄い振動で手錠がバリバリと割れる。



もちろん、ゆいには何の痛みも感じない。




 








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