脱獄常習犯 | ナノ

解放されたわたし (1/6)








脱獄してから数時間が経過した。



海軍はインペルダウンから一番近い街であるここを、厳重に見回っている。

そのせいか、街の人達の喝采は引いて、バーの中だけで盛り上がっている状態だ。



脱獄囚の脱獄を祝うなど、とんでもない事。

だがたいてい脱獄を祝われるのはゆいだけであり、多少は海軍も目をつぶっている。



ゆいとエースは布に身を包んで、正体がバレないようにバーに入った。


マスターとその周辺の喜んでいる民衆にだけ顔を見せれば、バーの中はさらに盛り上がる。



「おー、おー、よく脱獄してきたなあ!」



「ほら飲め!
今晩はマスターからのタダ酒だ!」



「そっちのでかいのが火拳のエースか?
お前も飲め!」



ニコッと笑ってゆいはカウンターに座る。

多分こんな状況には慣れているからだろう。


エースもゆいの横に腰掛ける。

出てくるお酒を、ゆいは遠慮なく口にした。

だがエースはお酒どころではない。



「おっさん、食い物あるか?」



「ああ、もちろんだ。
ろくなもん食わしてくれなかったんだろ?

ほら、食え食え!」



ガハハと笑う酔っ払い達に、ゆいも笑っている。

差し出された大量の皿に目を輝かせたエースは食しはじめる。



うめぇ、と言いながら大量の皿を次々と空にしていくエースに、ゆいも酔っ払い達も目を丸くする。


あの身体の、どこにこんなに大量の料理が詰め込まれていくというのか。



視線を気にせず食べるエースに、一同は笑う。



「はは、すげぇ食いっぷりだな、兄ちゃん。」



「ははは、こりゃ面白ぇな。」



「久しぶりにこんな旨い飯食ったぜ。

ありがとな、おっさ、ん………」



ドタッと急に倒れたエース。


何が起こったのか、と焦りはじめる周りとゆい。

そんな焦っている隣では小さな寝息が聞こえてくる。



「…死んだのか?」



「いや、息してるぞ?」



「まさか寝てるんじゃ…」



おじさん達は顔を見合わせる。


ゆいはただボーッとエースを見ている。
確かに彼は寝ている。





 







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