不幸がまねく、しあわせ(5/7) 脱獄して1時間ぐらい経つだろうか。 一人の男が大声でビラを配るのが見えた。 「号外〜! 脱獄のゆいと火拳のエース、インペルダウンLEVEL6を脱獄〜!」 思わずエースと顔を見合わせた。 そして笑う。 街の人々は号外の新聞を見て、笑顔になる。 「本当に脱獄しやがった!」 「LEVEL6だぞ、LEVEL6! そんなの今まで聞いたことねぇ!」 「しかも白ひげんとこの火拳のエースを連れて脱獄だぜ? これで海軍と白ひげの戦争は免れたな!」 「脱獄のゆい最高!」 「1ヶ月過ぎた時は正直もう諦めたのかと思ったけどな。 まさか火拳のエースを逃がす準備をしてたなんてな!」 「今日は宴だ!」 さっきまで普通だった街が、一気に盛り上がる。 それにはゆいも苦笑した。 エースは落ちている号外を拾い、嬉しそうに笑った。 「こいつは俺の人生の宝物になるな。」 脱獄のゆい、15回目の脱獄は火拳のエースと。 そんな事が書いてある号外。 15というキリのいい数字と、何より火拳のエースがゆいと脱獄するという、前代未聞なゆいの脱獄。 エースは嬉しくて仕方がない。 「これで白ひげさんも一先ず安心しただろうね。」 「ああ。 早く帰って親父に謝らなきゃなんねーな。」 「そうだね。」 これでエースとはお別れ。 何だかすごく寂しいような気がする。 仲間は今までのいなかったのに。 穴が空きそうな気分だ。 もっと一緒にいたい。 なんて事を思ってしまう。 気付いてしまった。 わたしは完全にエースに惚れていることを。 でもお別れはお別れだ。 自分から持ち掛けた交換条件だ。 それにエースには帰る場所があるのだ。 仲間がいるのだ。 ただ脱獄の手助けをしたわたしに、エースのこれからの貴重な時間を奪えるわけもない。 ← | → |