不幸がまねく、しあわせ(2/7) 「火拳のエースと脱獄のゆいが逃げたぞ〜!」 「追え!逃がすな!」 ゆいを炎から守りながら走るエースは、後ろから来る海兵にを確認し、チッと舌打ちする。 「…ゆい、しっかり掴まってろよ。」 そう一言だけ言うと、エースはゆいをひょいと抱き上げた。 ゆいから小さく悲鳴紛いの声が漏れる。 エースは気にする事なく、今までの数倍近くのスピードで走る。 いきなり抱き上げられ、全速力で走られるゆいはエースにしがみつくしかなかった。 逃げているスリリングより、エースの身体と密着しているドキドキの方が遥かに上回る。 エースの首に回したぎゅっとしがみつく腕。 片方の大きな手だけでゆいを支え、エースはもう片方で海兵に攻撃している。 これが火拳のエース。 こんなに彼の闘いを間近で見られる者などいないだろう。 能力の使えないわたしは、ほんとうに何もない人なんだ…と思い知らされる。 ただでさえあんなに高い懸賞金がかかっている。 けど現実は牢獄から逃げてるだけで懸賞金を上げてきた。 何度か賞金首や海軍との戦闘もあって、普通に戦えるくらいだ。 今のエースを見て、これが本当の賞金首なんだ…と実感した。 「…1番近い出口って、どっちだ?」 「そっちであってるよ、けど裏から入った方がいいかも。 正面には海軍の船着き場があるから…」 「了解!」 エースの声が近い。 走る息だって聞こえてしまうこの距離。 でも、次の街でエースとお別れだ。 約束は約束だから。 まだ銃弾の音が聞こえる。 エースはだいぶ走ったのに。 銃弾を受けないエースの身体だが、今の自分の左腕の海楼石を気にしてだろうか、銃弾をちゃんと避けてくれている。 裏側の出口までエースは休む事なく元気に走りきった。 近くにある小舟に乗り、インペルダウンを離れる。 エースの処刑日が近かったため、難問であった大きくそびえ立つ正義の門も少しだけ開いていた。 海軍の軍艦の横をすり抜けて、外へと抜ける。 大きな軍艦からは小さな小舟は死角なようで、打たれたりすることなくインペルダウンを抜け出せた。 さすがに海軍は2人を見失ったようで。 追ってはこない。 ← | → |