今夜は眠れるだろうか(3/3) 淑やかな人はこんな時、何をするのだろう。 わたしだったら待つけどな。 ミホークが、 「ゆい?」 立ち上がったミホークはそのまま迷うことなくベッドへと足を進める。 この瞬間が自分は凄く好きで。 まだ触れてないけど、これから触れるという感覚にドキドキする。 微かに今飲んでいたお酒の匂いが鼻へと届けば、柔らかい素材のベッドの一カ所が急に沈む。 「俺は初恋の記憶など覚えておらぬ。」 ミホークがその人を見て何を感じ、何を思い、何をしたか。 そんなこと、やっぱり聞きたくないっていうのは今さらで。 だけどミホークの2度目の言葉は真実でしかない。 本当に覚えてないのなら、それはそれで少しだけ不安になる。 自分も時が過ぎれば、そんな存在になる気がするから。 ベッドを沈ませた主に、ぐっと肩を引き寄せられた。 「そうした方が、どんな些細なゆいとの時間でも鮮明に覚えていられるだろう?」 「…っ!」 「今欲しいのも、これから欲しいのも、俺はゆい一人だけだ。」 身体が熱を帯びるのを感じる。 彼が言えば、どんな言葉でも決して軽い言葉には聞こえなくて。 信じられる。 信じれば、その言葉を与えられた嬉しさが増していく。 「ゆいは色んな男を口説きたそうだがな。」 「そんなこと、ない。」 すぐ傍にあるミホークの整った顔。 目を合わせれば、恥ずかしくなる。 それでも真っ直ぐに自分を見ている金色の瞳を見続ける。 ゆい、と優しい声に名前を呼ばれれば、近付いてくるミホーク。 目をゆっくり閉じれば、後頭部に手を添えられて唇を奪われる。 回された手によって逃げ場を無くせば、ミホークに流されるままに口づけを堪能する。 この男以外を口説き落とすなんて、自分にはきっとできない。 口説き落としている途中でも、きっとミホークの顔が頭から離れないことくらい想像がつく。 唇が離れれば、ニッと笑って言った。 「…まずはミホークを口説き落とすことにする。」 「ほお、それは楽しみだな。」 再び重なった唇に、今晩も長い夜が来そうだと思った。 end Loving!Love!Loved!様の 「夜」より ← | → |