今夜は眠れるだろうか(2/3) 言い返されるとは思ってなかったのだろう、ミホークは少しだけ面白そうな表情をしていた。 ほら、きっとこの表情は覚えている証拠だ。 「ゆいより図りきれぬほど淑やかだった。」 「う………、」 「…と言えば、主は淑やかさをこれから先演じていけるのか?」 引っ掛けられた。 ふん、どうせ自分は淑やかさのカケラもごさいませんよ。 聞いてどうする?、そんなことを遠回しに言われている気がした。 まあミホークは相変わらず楽しそうだ。 確かにミホークの言っていることがあながち間違ってはいないところが悔しい。 もし"淑やかだった"なんて言われれば、嫌でもその言葉が頭を支配してしまうだろう。 「演じないもん…、」 「ほお、なら何故こんなことを聞く?」 「…淑やかに、なる…ため。」 ぎこちなく吐き出す言葉。 自信がないことが誰にでも伝わってしまうような。 自信がなくてもそれを言葉にしたのは、きっとそんなの気にならないくらいミホークにずっと気に入っていて欲しいから。 ミホークはゆいのぎこちない言葉を耳にすれば、酒をテーブルに置きながら笑った。 「くく、それは面白い。」 「わ、笑っていられるのも今のうちだよ? 淑やかなわたしに落とせない男なんていないんだから!」 「どうだか、」 信じてないな。 実際にわたしが淑やかになる姿なんて、自分でも容易く想像できるものではない。 今だってベッドでゴロゴロしながら話してるのに、淑やかなんて掛け離れたものを持ち合わせることなんてできやしない。 そんなこと、誰よりもミホークが1番分かってる。 ちょっとだけ挑発的に投げかけた言葉だって、釣られることなく流したこの男が。 いつもみたいに余裕そうに笑っている。 「赤髪のシャンクスだって、ドフラミンゴだって……、火拳のエースだって!!」 「…おそらくその類の男は"淑やかな女"などに特に興味はないだろうがな。」 「わあ…、言われてみれば…!」 「…ふっ、もう幻滅か? 落とせぬ男はおらぬのだろ、ゆい?」 「う……。」 なんて意地悪な男なんだ。 口が弱いのを知っておきながら、ここまで問い詰めるなんて。 笑っている顔を崩してやりたいのに、に何も言えない。 「どうした、顔が歪んでる。」 「、元々歪んでる顔してるんで。」 「拗ねるな。」 「拗ねてないですー。」 ああ、これじゃ拗ねてることを肯定しているみたいだ。 ← | → |