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君にかけたとけない魔法(2/3)









恐る恐るこちらを見る*****。

そんな鈍過ぎる*****に、口の端を上げながら話しはじめる。



「…俺とそいつが出逢ったのにきっかけなんてなかった。」



「……うん、」



息を飲み、真剣な*****の様子で話を聞く*****に思わず笑ってしまいそうになる。


ああ、やっぱり聞きたくない、そんな表現だって逃さずに見つめる。



好奇心には敵わないのだろう、聞きたくない話をこんな目で聞きやがって。

とことん自分に素直じゃない奴だ。



「そいつは見た目も中身も他とは変わっててよぉ、」



「…綺麗な人だったの?」



「正直、俺好みじゃなかったな。
あー、でもそいつの見た目も含めて気付いた時には頭から離れねぇくらい好きだったなあ、」



*****の中の衝撃音がなぜか自分の中でも響いた。


面白いくらいに反応する*****を、つい虐めたくなるのはSの心を持ち得た自分の習性なのだろうか。

パチリと瞬きもせずに話に夢中になってくれるその姿が何とも可愛らしい。


目の行き場は相変わらず迷子だけど。



「あれだけすぐに手を出さなかった俺を皆が褒めたな。」



「…どうして出さなかったの?」



「まあ正式に言えば、出せなかったってところだな。」



「?」



「ほら、大事なものほど丁重に扱うだろ?」



いかにそいつが好きで、大事で、思い出に1番残りそうな女だったか語る言葉をわざと並べる。


いつまで聞いていられるのか、楽しみながら喋っでいることすら*****は知らない。

いや、そんなことを考えている余裕なんてどこにもないはず。



あーあー、自分で聞いておいてまたそんなに悲しい顔しやがる。


この顔にいつまで勝っていられるかか、または*****がどこまで聞いていられるか。



一瞬でもそんなことを競おうと思った自分が馬鹿だったみたいだ。



*****は急に両手を耳元に押し当てた。

そして激しく首を振った。



「やっぱりいい!
聞きたくないよ…っ」



「でな、そいつは……」



「エース…!」



*****の可愛いげな拒否にまるで目もくれていないかのようにに話を続けようとすれば、*****の手はその辺にあった自分の人差し指と中指をギュッと強く握ってくる。


微かに震えるその手を無視して話を続けることができなくて、自分の指を握る*****の小さな手を包み込むように覆ってやる。


パッと見上げた*****と目が合えば、その今にも泣いてしまいそうな瞳へと微笑みかける。

それに揺さ振られた感情が落ち着いたのか、*****の顔に入った力が抜けていった気がした。



「続き聞いたら感動すると思うぜ?」



笑いながら言えば、*****の興味がまた惹かれる。

単純な奴。



でも、*****は首を横に振った。



「エースと他の女の人の話聞いたって感動なんてしないもん。」



「まあ聞けよ、」



「やだ。」



「そいつは単純なんだ。」



「やだ。」



「俺が認める、正真正銘の馬鹿なんだ。」



「…やだ、」



「いつも俺に馬鹿みたいな笑顔むけてきて、」



「…エース、」



「この俺の不意をついてくるんだ。」



*****が何を言おうが止まらない唇。


別に*****に話の内容を真剣に理解してもらうのが狙いではないため、声が重なったって怯むことなく話は続く。






 








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