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呼吸を忘れた深海魚(2/5)









覗き込んだエースの表現は何一つ変わらず、ただ頷いた。



「ああ。」



「…ほんとに?」



「んだよ、さっきの野郎だって言ってただろ?」



「で、でも…ね、」



「もっと他の野郎に言われたいんだろ?
可愛いだのなんだの…、さっきから野郎共の言葉にいちいち照れやがって。」



「え…っ?」



壁に預けた背中を浮かせたエースにパッと腕を掴まれる。


エースの瞳はさっきよりも数倍鋭いものに変わっていて。

掴まれた腕がチリチリと痛みだすのに、それすら忘れてしまえるくらいエースの瞳に吸い込まれていく。



確かにエースはさっきからずっとつまらなそうにしていた。
気付いていたのに、どうして気を使ってあげなかったんだろう、なんて後悔が滲み出る。


でもその反面、今エースが怒ってくれてることがちょっと嬉しかった。



「エース、ちが…っ」



掴まれた手をエースの方へと引かれ、荒々しく唇を奪われる。


無理矢理 捩込まれる舌を拒む理由なんてない。
子供じみた行動だけど、やっぱりキスの上手さは誰にも負けないくらい大人な腕前。



そりゃ可愛いって言われたら嬉しいし、似合ってるっていわれたら照れる。

そう言われたいのって当然だと思う。


でももちろん、エースに言われるのとみんなに言われるのとでは言葉の重みが全然違う。


それに今日だけなんだよ、こんなにみんなが不思議がってくれるのは。

今日だけなんだよ、みんなにお披露目してこんなに楽しいのは。


明日になったらきっと自分の気持ちは落ち着いてしまっていて、みんなも昨日見た人に聞いて好奇心だって減るにきまってる。



エースとの口づけで躯が酔ってしまったみたいで、力が抜ける。

そんなわたしを抱き上げれば、エースは歩きだしてしまった。



もっとも、今は食堂に行ってみんなにお披露目する気分ではないけど。



切ったばかりのサラサラする髪に鼻を擦り寄せるエース。


怒ってるのか、甘えてるのか…。

くすぐったい感覚に、思わずエースの胸へと頬をぴったり付ける。







カチャッと音を立てて扉が開けば、エースの匂いに包まれる。


そして、直行したベッドへと速やかに下ろされる。



「ひゃ……っ」



ザラッとした慣れない感覚が首元を襲った。

それは紛れもなく首元に埋まったエースの仕業でしかない。


慣れない場所を舐められる感覚が妙にくすぐったく、肩に力が入る。



「ここ、いつも髪で隠れてたもんな?」



ああ、だからか。

でも暢気に納得している暇はなく、エースの舌は首から直ぐに耳へと上がってきて、耳たぶを甘噛みする。吸い付いたり、舐められたり。

耳が弱いのを十分知ってるエースは簡単に止めることはない。



「ゃ…あっ、ダメ…、//」



「食堂にいる野郎に見せてやりてェな、真っ赤な耳。」



エースの息が直接当たり、躯が反応する。

ピチャピチャと耳に舌を捩込みながら、エースの手は器用なほどに服を開けさせはじめた。


胸を揉まれているのに、ホックを外された下着は上へと上がっていく。

耳から顔が放れれば、現れた胸を寄せ合わせて口づけされる。



「ぁ……んん…っ//」



「触られたらすぐその気になってるくせに、お前は野郎に可愛いって言われるのとどっちに満足するんだ?」



ふと上がったエースの瞳がこっちを見つめている。


そんなこと、聞かなくても分かってるくせに…、分かってるはずなのにエースの瞳はどこか気に食わないようで。





 









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