計画的なサプライズ(6/7) 正直言って、他の委員の困った点など知らない。 こういうのを真面目に書いて提出してきたゆいには、適当が難しくて仕方がなかった。 ゆいが詰まる度に、ずる賢いエースはアドバイスしたりする。 普通にポロポロとエースの口から出てくる嘘に、苦笑いが出るくらいだ。 だが有り得そうな、完璧な嘘をエースは吐き続けた。 「…これで全部だな!」 エースのスラスラと進むペンをじっと見て、最後の1枚を書き終えた。 何だかんだで、ゆいの損なわれた機嫌は良いものに変わってしまっている。 滅多に笑わないゆいが、何度も笑っているのが目にできただけでも結構な収穫だ。 だが、これ以上が欲しいんだ。 だからこれ以上の雰囲気を作らないと。 書類を嬉しそうにクリップで挟むゆい。 そして、静かに言った。 「エース、」 「ああ?」 「…ありがとう、助かった。」 エースを大きな瞳で見上げるゆい。 そして柔らかい表情を見せる。 エースの大きな手は、ゆいの頭の上へと乗る。 教室では嫌がるゆいは、今は何も言わなかった。 「生徒会長の手助けするのが、副会長だろ。 あー、待てよ。この場合は彼女の手助けする彼氏か?」 笑いながら迷っているエース。 それを見て、ゆいは言った。 「助けてられてばかりだな。」 ゆいの視線が下に移った。 笑っていた表情が、一気に曇ってしまった。 そんな黙ってしまったゆいを、エースは静かに抱きしめて言った。 「んな事ねぇよ。 俺だってゆいに助けられてる。」 「わたしがお前に何を助けたと言うのだ…」 きゅっとセーターを掴まれる感覚。 ゆいの人慣れしていない下手くそな甘えに、エースは微笑む。 「…ゆい?」 名前を呼ばれたゆいは、曇った表情のままエースを見上げる。 エースは見上げたゆいの頬に手を当てて、言った。 ← | → |