日常からの転落(1/7) いつもと変わらない、冬に入りたてのある日の午後。 今日は最後の授業が休講になったため、ゆいはエースと途中まで一緒に帰っていた。 まだ明るく、日は高い。 こんな日は大抵エースがゆいをデートに誘うのだが。 聞けば、今日はルフィと一緒に昨日バイク事故で入院しているバギーとやらのお見舞いに行くらしい。 そのため、結局はルフィと早退する予定だったらしい。 エースと道を別れたゆいは、母親の墓へと寄り道して帰ろうと花を買いに行く。 広い大通りに面している花屋へと、信号待ちをする。 交通量は昼間なので少し多い。 それに普段はまだ授業中である時間なので、制服の生徒は少し目立った。 気にせず青になるのを待てば、向かいの歩道で大きな笑い声が聞こえる。 非常に不愉快だ。 向かいの歩道を見れば、うちの学校の制服… 非常に不愉快な格好をした、校則違反の塊の女子生徒達だ。 腕にカッター傷をつけた生徒達だ。 しかも事件からまだ3日も経ってない。 ゆいは見てるだけで苛々と腹立たしい気分になってきた。 早く信号を渡って、おさらばしたい。 そんなゆいの気持ちを察したのか、信号は青になった。 こちらへと歩く女子生徒達。 そして、女子生徒側の歩道を目指して歩くゆい。 事件はすれ違う前に起きた。 キィィィイイイイッッッ ブレーキの音が響く。 女子生徒はすぐ真横を見るが、既に自分たちの真横には大きなトラックが迫っていた。 焦って足が竦み、動けなくなる女子生徒。 もちろん女子生徒も、向かい側からゆいが来ているのを知ってる訳で。 人並み外れた瞬発力と判断力を持っているゆいが… いつの間にか、彼女たちの視界はトラックの正面から側面へと変わっていた。 誰かに強い力で押された感覚が残る。 それ以上に、尻餅をついた以外に痛みがない。 おかしい。 真横にはトラックが迫っていたのに。 トラックは大きなブレーキ音と共に女子生徒から1メートル程離れたところで停止している。 しかも、一緒に並んで歩いていたのは1人だけではない。 5人で並んで歩いていた筈なのに、残る4人は自分より半歩後ろで同じように尻餅をついている。 何が起きたのか、彼女たちにはさっぱり理解出来なかった。 ただ今のトラックの迫ってきた迫力に、張り裂ける程鼓動を早くさせる。 ふうっと一息入れれば、後ろの友達が叫んだ。 「きゃあああっ」 叫んだ友達を見れば、何かに指さして怯えているようだった。 震える彼女の指先。 その先を次々と目にした女子生徒は、絶句した。 「嘘だ…な、なんで…」 「な、何であいつが倒れてんの!?」 彼女たちの見たもの… それは道路で血を流しながら倒れるゆいの姿だった。 ← | → |