堕落論、それもよし(2/6) そんな噂など知らないゆいは、ギャル達の言葉が途切れたときに言った。 「…言いたいことは、それだけか?」 息を飲む教室の生徒たち。 廊下からもこちらを覗く生徒が何人かいる。 ゆいにケンカをふっかけた女子は初めてで、ゆいの反応にギャル達でさえ慎重な目をしていた。 そして、ゆいは口を開く。 「…なら言わせて貰うが、髪を染めるのは校則違反だ。 その醜いパーマも、じゃらじゃらと目障りなピアスも、重たいだけのルーズソックスも。それに、そんなに厚い化粧をしていては、進学する生徒にも迷惑だ。 あたしはお前らに、この事を何度も忠告した筈だ。 身嗜みの常識と綺麗な言葉を覚えてから出直して来い。」 言い終われば、ゆいは深くため息を吐いた。 ギャル達は唖然としていたが、徐々に溜まった苛立ちをゆいに向けた。 「はあ?誰に向かって言ってんだよッ!」 ポケットから取り出したカッターの刃を出す。 そして、何人もがゆいへと切り掛かる。 見ていた教室の生徒の何人かは、ギャル達の行動に思わず目を閉じる。 ゆいはギャル達をチラッと横目で見れば、素早く立ち上がりカッターを持った手を弾いていく。 パンッパンッ 弾かれた手を赤く腫らすギャル達。カッターは教室の床に次々と転がっていく。 ゆいにケンカを売れば、こんな事になることは解っていた筈なのに。 音が終わったと目を開ける教室の女子は、目を丸めて叫んだ。 「きゃぁあッ!」 ゆいの手首に刺さる1本のカッター。 顔を歪めたゆいが、そのカッターを自分の手首から抜いた。 その光景に、焦りながらも満足げに笑うギャル達。 「…だ、大丈夫?おさん…っ」 寄ってきた女子生徒は、ゆいに女子独特な可愛らしいハンカチを出した。 ゆいはそれを反対の手で押し返した。 「大した事はない。 少し洗って来る…騒ぐなよ。」 ゆいが動けば、ゆいに刃物を向けた女子生徒達は腰を抜かして倒れる。 各自、ゆいに弾かれた聞き手をヒリヒリと痛めながら。 ゆいは無表情のまま教室から水道まで歩く。 ← | → |