堕落論、それもよし(1/6) 3時間目の授業が終わり、ふと携帯を見たゆい。 今日はエースが来てないおかげで、黒板が凄く見やすい。 だが毎時間後ろを向いて喋っているエースがいないのは、思いたくはないが寂しい。 休み時間になれば、何度も携帯をチラチラ見ている自分がいた。 そして、やっとメールが来た。 別にメールが来るのを待っていたわけではないが、ただエースがいなければ暇に思う。 最近は休み時間になってもエースの相手をしているせいで、本が一向に進まない。 重いだけだ、と置いて来てしまう始末だ。 携帯に来たメールを見れば、やはりエースからだ。 寝坊した。それだけが書いてあるメールに、なぜか胸を撫で下ろす自分がいた。 早くエースは来ないのか…とばかり思うゆい。 エースが来れば、何て叱ってやろうか…と。 そして、またエースのことばかり考えている自分に呆れる。 これまでにないくらい惚れてる、というのはお互い様だ。 見ていた携帯を仕舞えば、いつの間にか自分の席の周りには女子生徒が溜まっていた。 生徒会長である自分として、校則違反だと思われる髪型や服装をした女子達だ。 キッとこちらを睨む女子達に、ゆいも睨んだ。 「…何か用か。」 次の授業の用意を出しながら、ゆいは冷たく言った。 女子生徒からは舌打ちが聞こえる。 これくらい慣れているゆいは、怯むことはない。 「ちょっといいかしら?」 ノートを開くゆいの腕を掴み、引っ張る女。 ゆいは引っ張られる力とは反対向きの力を少しだけ入れた。 女ごときでゆいの力に敵うはずはない。 女子生徒はゆいの机をバンッと叩き、言った。 「あんた、ちょっと来いって言ってんのよッ!」 「頼み事にしては態度が大きいんじゃないのか?」 何事もなかったかのように冷静な口調で返すゆい。 その言葉は、女子生徒の火に油を注いだ。 「はあ? あんたの方がでかいじゃない? なに?エース君の彼女になったからって、調子に乗るんじゃないわよ。」 「ほんと。 目障りなのよ。」 「あんた、嫌われてんの自覚してるわけ?」 「どうせエース君を同情させただけでしょ?最低ッ!」 次々に放たれるゆいへの言葉。 ゆいはどの言葉も特に気にしていない感じた。 教室中の生徒は、それに釘付けだ。 それもそうだ。 彼女達はタチの悪いギャル達で有名だ。 目を付けられた女子は、これまでに何人か転校しているという噂だ。 ← | → |