届かない場所へ行くのなら(3/4) 近くもないが、遠くもない*****の部屋。 1分足らずで着いた部屋をノックもなしに開いた。 それに一瞬、ドキッと身体を震わせた*****の姿があった。 ベットの上で、枕を抱えている。 「*****…?」 「わあ、気付いてくれたんだ…!」 エースの手元にある枕を見て、*****は嬉しそうに言った。 その*****の表情に、エースも心が落ち着く。 ベットの脇に枕を起き、*****を後から捕まえる。 「いきなり抱き着いて来たり、枕変えたり……なんかあったのか?」 *****の柔らかい髪に唇をつける。 *****は黙って枕を握る手を離し、エースの手を握る。 そして、小さい声で言った。 「あのね……夢を見たの。」 「夢?」 「うん……。」 唇をきゅっとする*****。 きっとこの雰囲気では、いい夢を見れた様子ではない。 エースの手を強く握った*****は続けた。 「エースがね、わたしを忘れちゃう夢……だった、の。」 「俺が*****を……?」 うん、と頷く*****。 「だから今日、エースが覚えてるかな?って抱き着いたの。」 どうやらあれは、夢か現実かの確認だったらしい。 そんなこと、絶対にないのに。 でも、どう言えば不安にならないのか…いい言葉が見あたらない。 「…枕は?」 「枕はね、もしこれからエースがわたしのこと忘れちゃったら、いつか気付いてくれるようにって。」 「…馬鹿、お前なぁ……っ」 *****の泣きそうな声に、思わず腕に力が入る。 「驚かしたり悪戯したら、エースがわたしのこと忘れていかないかな…?て……」 「忘れるわけねぇだろ。」 そんなに簡単に、こんなに大事なものを。 今さっきだって、枕から*****のいい匂いがしただけで嬉しく思ったくらいなのに。 そんな*****が自分から消えるだなんて、論外だ。 ← | → |