届かない場所へ行くのなら(2/4) 昼過ぎ、エースは医務室へと足を進める。 別に怪我などはないが、目的がない訳でもない。 午後のこの時間はナースがティータイムをしていて、それが*****の休憩時間だったりするのだ。 いつものように扉を開ければ、もう既にガールズトークとやらが始まっていた。 その中に*****の姿を探す。 「*****〜?」 読んではみたものの、振り返るナースの中に*****の姿はどこにもない。 いつも座っている席は空いていて、それが*****のいない事を確信させた。 いない事がわかり、ナースに*****の居場所を聞こうとしたエースだが、ナースが先に口を開いた。 「*****ならさっき、これをエース隊長に渡してって出て行ったわよ?」 「はあ?」 意味の分からない*****の行動に躊躇うも、ナースの差し出した紙を受け取った。 それを開けば、短文だけが書かれていた。 「………部屋に戻って?、だとよ?」 首を傾げるエースに、クスクスと笑うナース。 少しだけ、この手紙にムラムラとした期待が浮かぶが、そんなことをわざわざナースの姉ちゃんを挟んで*****が言う訳もない。 さっきの廊下での言動といい、今の手紙といい…… 何気なくやっているのではなさそうだ。 「ナースの姉ちゃん、サンキューな。」 「ええ、」 「あんまり激しくシちゃダメよ?」 「できるだけ、な。」 いつも通りの下ネタと男が好きそうな顔で医務室からエースを見送るナース達。 それに苦笑しつつも、エースは紙の通りに自室へ行く。 「……?」 扉を開け、ドキドキしながら自分の部屋を見渡すが、今朝とは何も変わらない部屋。 だが、きっと*****はこの部屋に何かをしたはずだ。 机の上、ドアノブ、クローゼット……細かいところまでザッと目を通してみるが、何も見つからない。 少し考えてみるか、とベットに座り、そのまま寝転び天井を見る。 「あれ……?」 いつもと違う天井……いや、天井が違う訳ではない。 なにかが違う。 自分が好きないい匂いがする……。 「まさか!」 バサッと起き上がり、枕を見てみる。 色も形も同じ枕だが、これは自分の枕ではない。 これは確か、*****の部屋にある枕で…… 「これか。」 *****が言いたかったのは。 どうして枕を変えたのかは本人に聞くとして、枕を持って自分の部屋を早足で出ていく。 ← | → |