届かない場所へ行くのなら(1/4) タッタッタッと足音が後から響くのが解る廊下。 人が走っていることが珍しい訳でもないので、エースはわざわざ振り返りはしなかった。 くだらない世間話を隣にいるサッチとマルコと続ける。 この足音的には、きっと小柄な奴なんだろう。 何気に考えてみえば、ふと自分の恋人の姿が浮かんだ。 自分の恋人は今頃 洗濯物と格闘中なんだろうな、と考える。 そう思えば世間話がなかなか頭に入ってこなくなる。 早く*****に会いたい。 いつも思っていることなのだが。 すると、何かの衝撃で身体が前に傾いた。 「うお…っ」 「「?」」 エースの身体は倒れるまではいかなかったが、表情は驚いた様子で。 それを隣で見ていたサッチとマルコも一瞬、エースの方を何が起きたのかと振り向く。 しかし、その顔はたちまち苦笑に変わった。 「*****…?」 細くて白い腕が自分の腰に巻き付いているのが解ったエースは、誰なのかが一瞬にして解った。 そう思いつつ後を見れば、やはり本人がいた。 ぎゅっと回されている手をエースから放して、エースを見上げる*****は笑った。 「びっくりした?」 まるで子供が悪戯を成功させた時の様な笑みを浮かべる*****。 こういう子供っぽい*****が、いつ見ても可愛く思える自分は重症なのか。 そんな気持ちを言い表すことはなく、エースは*****の頭の上に手を置いた。 「そりゃあな…、」 答えれば、*****の表情がまた一段と可愛くなる。 *****は頭にあるエースの手を握り、言った。 「そっか! じゃあね…っ」 手を離すや否や、淡々と去って行った*****。 またタッタッタッと音を立てながら。 何が起こったのかが解らないのは、どうやら自分だけではない様で。 横にいる2人も、*****の去って行った廊下を見つめる。 無言の沈黙が少しの間、3人に続く。 「……何だったんだ?」 エースが聞けば、首を傾げる2人。 「さぁな…?」 「エースのくせに、見せ付けやがって…!」 「くせにってよ……、」 「余所でやりやがれい。」 「余所いくほど濃いことしてなかったよな?」 突然の*****の登場と退場に、話題は世間話からすっかり*****の話になった。 一体何がしたかったのか、深い意味は分からなかったエース。 ← | → |