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逆さまメリーゴーランド(1/3)








遅い……


遅すぎる……!!



*****は教室で一人、ため息を吐いた。



学年が一つだけ上である自分の恋人は、いつもの時間から30分経っても来ない。



学園祭が近く、いつもこんなに遅くまで残っていない人達も何かしらとまだ教室にいた。

自分はあまり興味のない学園祭の企画に積極的に参加するような人間ではなく、脇役の簡単な仕事を選択した。



まあそれを選んだ決定的な理由は、学年が違うエース先輩との時間を行事なんかで割きたくなかったからでもある。



なんて独占的なのか。

そんなことは誰にも言えやしないけど。



一人だけ暇そうに机にもたれ掛かり、ずーっと携帯のディスプレイを眺めている。



「…遅くなるんなら連絡くれたっていいじゃん。」



もう帰ってしまったのだろうか…。


一言伝えない腹立たしさより、そんな不安の方が簡単に積もってしまう。


エースが自分を置いて黙って帰ったことなんて一度もない。

なのに、やっぱり一人は不安で。



「…行ってみよっかな?」



エース先輩のクラスへと。


もしかしたらシャンクス先生が携帯を触る暇も与えないくらいの課題を先輩に出してるのかもしれない。

…エース先輩に解けない問題があるのかはさておき。



暇そうな*****は立ち上がり、鞄を持って教室を出て行った。



行き違いになればいけないから、迎えに来なくても探さなくていいとは何度も言われたけど。


この30分大人しかったことを褒めて欲しいぐらいだ。



近くも遠くもないエース先輩のホームルーム教室まで、*****は早歩きで廊かを進んだ。











明かりはどの教室も点いている。1番奥の部屋であるエース先輩の教室の前で止まれば、中から声が聞こえた。



「…お前しかいらない、」



「でも…!!
あなたには……」



聞き慣れた声と、可愛らしい女子生徒の声に、思わず心臓が跳ねた。


窓から教室の中を覗けば、そこには思っていた通の人が女子生徒と向き合っていて。



それに目が離せなくなる。



「でもあなたには…恋人が、待ってる。」



えっと一瞬、頭が真っ白になった。


空気を吸っている感覚がなくなり、ただ丸くなるばかりの瞳で中を見続ける。


今、きっと自分はここにある教室のドアを開けないといけないのに、この会話が気になる故に手は動かない。


ただ速くなる鼓動に胸を抑え、じっとエース先輩の表情を見る。



「…なら二人でどこか遠くへ行こう。」



「っ!!」



キュッと無意識に自分の拳を握る。



本気そうなエースの顔は、その場限りの嘘とは思えなくて。

思わず握った手が震える。



いやだ…30分もほったらかしにしといて、こんなの酷い。


わたし何かしたかな?
何かしたなら謝るから…






 









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