こんばんは、ごめんね(3/3) 肩に力が入ったゆいは、やっと言葉を発する。 「…わたし、子供ができなかったらエースは嫌だよ、ね?」 視線は下がったまま、でも震える声に思わず胸を握り締められた感覚になる。 ガキが作れないかもしれない、そんなこと思ってたのかよ。 だから焦って、不安になって、似合わない顔して…、 「ほんと馬鹿だよな、お前は。」 「え…」 やっと自分を見上げた大きな瞳は、零れそうな程の涙を溜めている。 見ていられない顔をするゆいに、添えてあった手で頬を軽くつねってやる。 ゆいが笑ってくれるように、笑顔を浮かべて。 「俺はガキが欲しくてゆいのこと愛してるんじゃねーよ。」 「けど…っ」 「ゆいがいれば、それで十分だ。」 「……エース、」 必死に涙を堪えている様で、でも涙は頬へと筋を作って。 頬をつねった親指の指先に、生暖かい涙が零れてくる。 けど、その涙は決してさっきみたいな不安げな顔から流れた涙ではなくて、 「いひゃいよ、エース、」 いつの間にか、ニコッと笑みを浮かべるゆいの頬を握っていた。 かかっていた霧が晴れ、頬をつまむ手をトントンと叩く小さな手。 しょうがないな、と離した手で再びシャワーを握る。 お湯を出し、何の前触れもなくパッとゆいの顔へとシャワーをかけてやる。 「きゃ…っ」 かかってきたお湯を払うように、手で涙を拭うゆい。 泣いてなんかない、さっきの涙はなかったことにしたかった自分の行動を理解してくれたのか、ゆいは笑いながらシャワーを手からもぎ取ってくる。 「仕返し〜っ!」 シャワーの主導権がゆいへと変われば、容赦なくシャワーを顔へと向けてくるゆい。 能力者と言えど人間相手なんだから、ちょっとは加減しろよ!なんて言葉はどうも届かないらしく。 狭いシャワールームで、何十分にも渡って…あれだ、念入りに躯を洗ってたんだ。 悔しくて中々やめられなかったことは伏せておこうか。 「うぅ………エース、」 「なッ、どうした!?」 「吐きそう…、」 その瞬間、嬉しい感情と共に さっきまで悪戯にゆいの心を苦しめていた神様って奴を睨んだ気がした。 end ← | → |