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窓際ムルチコーレの一生(1/3)









「くしゅん……っ」



「………」



思わず固まってしまった。



何ともないくしゃみだった筈なのに、今のくしゃみはくしゃみではなかった。


いや…訳がわからないことを言っている気がするけど、これ以上相応しい言葉は見つからない。



くしゃみをした本人と目が合えば、嫌そうな顔をこっちに向けた。


静かな図書室でいつもみたいに騒ぐことができず、唖然としながらエースはゆいを見つめる。



「……何だ、」


「お前……いや、」



喉まで出かかった言葉を飲み込む。

何なんだよ、その小動物がちょっとした物音でビクッてしたみたいなくしゃみは。



男しかいないうちの家では豪快なくしゃみしか聞くことができず、今聞いたゆいの小さなくしゃみに持っていた本をつい落としてしまう。


両手で鼻を覆いながら一瞬だけピクッと動いたゆいの身体、そして聞こえた可愛らしい声。

いつも、何をするにも真っ直ぐに自分を睨んできたゆいとのギャップに正直参ってしまいそうだ。



「、…はっきり言え。」


「いや…、言っちまってもいいんなら言うけど?」



「な…ッ、どういうことだ!」



何を想像したのかは分からないけど、ゆいの瞳が少しだけ自分の瞳から逸れている気がした。


まともに目を見ればきっと恥ずかしそうにするに違いない。


他の奴から見れば扱いにくい馴れ親しみにくい相手だが、意外と単純だったりするのに。

ゆいの1番の魅力を誰もわかっていない。


本を探す手を止めたゆいに食らい付いてやりたい気分だ。


仮にも今は誰もいない図書室デートなわけなのだ。
まあ本人は勉強しに図書室へと来ている様子だが。



「ゆい、もう一回。」



「はあ…!?」



「もう一回、聞きてぇ。」



その言葉に、さっき言った言葉を思い出すゆい。
眉を寄せて面倒くさそうだけど、それでも自分の問いに一々答えてくれる。



「ど、どういうことだ…か?」



「もっと前。」



「はっきり言え?」



「ちげぇ、」



「なんだ、」



「…お前さ、俺がそんなにMに見えるか?」



「っ、言えと言ったのはお前だろ…!」



「俺はゆいのくしゃみが聞きたかったんだ!」



「無茶言うな!」



リピートしながら自分の顔を見つめて確かめるゆい。


身長の差とこの距離がいい具合にゆいの上目遣いの効果を上げてやがる。





 








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