砂に埋もれるふたりの足跡(3/4) 「エース、まさかわたしが泳げないと思ってる!?」 「人並みに…か、それ以下かだろ?」 「ま…まあ違ってないけど、エースの足が着かないところまでだったら余裕で行けるんだよ?」 「ああ?そりゃ一体誰のこと言ってるんだよ?」 「わたしのことだよ!」 「……誰が?」 「わたしが!」 立場はゆいの方が有利なはずなのに、エースの調子に乗せられていく。 ははっと笑うエースに、なぜか自分が屈辱を感じるゆい。 少なくとも完全に泳げない能力者であるエースよりは泳げる自信はあるのに。 なぜ笑われるのかわからない。 今度はゆいがエースを睨む。 そして、言った。 「本当に泳げるんだよ?」 「いや、別に泳げるか泳げねぇかの問題じゃねぇけどな?」 「え…!?」 パチッと真ん丸にゆいの目が開く。 イマイチ理解できてない様子が顔で分かる。 エースの足は波に逆らいながら海へと入っていく。 縮まるゆいとの距離に、ゆいは海の先へと歩かずにエースを待っている。 まだ大丈夫、 まだ歩ける… そんな調子を気にしながら海水を受ける。 やっとゆいに触れられる距離になれば、自然な流れでゆいの手元にある自分の帽子へと手を伸ばす。 全く抵抗を感じさせないゆいの手から自分の元へと、あっさりと帽子が帰ってくる。 帽子を頭に乗せれば、眩しい夕日からゆいの姿を普通に見ることができた。 「ゆい、」 「?」 「俺が言いたいのは、だな。 ゆいがそのワンピースで無闇に海に浸かったら、船に帰って野郎共に喜ばれるだけだぞ、と。」 「ワンピース……わあ、」 もう既に裾の一部が海に浸ってしまい、ペタッと足に張り付いている。 真っ白なワンピースなため、もちろん簡単に透けてしまう。 ゆいは慌ててワンピースの裾を上げる。 だがその直後に、ザブンッと大きさ波に足をとられてしまう。 「きゃ…っ」 波に押されるがままに前へと倒れそうになる。 裾を手で上げたはずなのに、また裾へと海水が染みていく。 あっと、それに気をとられているうちに、ゆいは必然的に前へと倒れかかる。 「エース?」 抱き寄せられた身体はエースに身を任せるかたちになる。 持ち上げていた裾は手を離れてしまう。 また大きな波が来れば、きっとかなり濡れてしまう。 ← | → |