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砂に埋もれるふたりの足跡(2/4)








「……エース、脚短い。」



「お前…っ!」



仕返しに食らわせたかのように影を見て言い放ったゆい。


スッと曲げた膝を伸ばすエースの頭の上の帽子を素早く盗るゆい。



普段は座っている時にしか触れることもできないテンガロンハットを持ち、音も立たない砂の上を走り出す。



「へへ、帽子はいただいたー!」



「おい、こら……待てちやがれっ!」



「やーだーよー!」



全く、走ってどっちが速いかなんて今さら競うことでもないだろうに。



頑張って走っているのだろうが、ヒラヒラと広がるワンピースがその走りの妨げをしていて。


後から手を抜いて走っているエースから見れば、見えそうで見えないその姿が危なっかしくて見ていられない。

…見ていたいのは、見ていたいのだが。



今思えば、これもベタだな。

砂浜で恋人が追いかけっこなんて、サッチの妄想の中だけでできれば止めておきたかったのに。



ゆいは何やら自信満々な笑みでエースの方を振り返った。

何を企んでいるのやら…、徐々に縮まっていくゆいとの距離に、エースは手を伸ばす。



ゆいの肩へ中指が触れようとした瞬間、足元から音がなる。



パシャン……



「げっ!」



パシャパシャパシャ……


水しぶきを立てながら海の中へと入っていくゆい。


膝ぐらいまで海水に浸かれば、エースの方へと身体を向けて止まった。



一歩だけ海水の中へと入ったエースは、その足を思わず止めた。

砂浜を歩くと言うので、靴は船に置いてきたのだ。
そのため、裸足の能力者の足が海水を直接受ける。


気のせいか、ほんの少しだけ身体の力が抜けた気がした。


だからあんなに自信満々に笑ってやがったのか、なんて後々思う。


今だって、パシャパシャと海水の中で嬉しそうに飛び跳ねているゆい。

そんなゆいを、波打つ自分の足を気にしながら睨んでやる。



「に、睨んじゃいけません!」



「あんま なめんじゃねーぞ?
その程度の深さだったら行けるぜ、ゆいのとこまで。」



「う…わたしはもっと先まで行けるもん!」



「いや、ゆいが行ける範囲までだったら俺、行ける自信あるぜ?」



夕日と重なるゆいを眩しそうに見ながら言う。



ゆいの顔は信用できないと明ら様に言っているみたいで。

まだ自信を失ってないような態度だ。






 








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