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つまりまぼろしを見ていたのだ(1/4)









ぷるるるる…

ぷるるるる…



突然、ゆいの部屋の電伝虫は鳴りはじめた。


電伝虫なんて滅多にかかってくることがないのに、今日は珍しく鳴っている。


ゆいは少し戸惑うが、きっと先日 買い出しに行ったエースからかもしれない。そう思い、電伝虫を手にとった。



ガチャッ…



「もしもし?」



「もしもし?
俺だ、俺。」



「ん、エース?」



「そ、そうだ、エースだ、エース!」



電伝虫の顔が酷く焦っている。


ゆいはそれを可愛いと感じるだけで、何も疑わなかった。



「エース、なんか声が変だよ?」



「え……あ、げほ、ごほ、…ちょっと今、風邪ひいててなあ。」



「え、うそ!
大丈夫?…いつも半裸なんかでいるからだよ!」



「Σは、半裸……!?
いやあ、全くその通りだよなあ。げほ、ごほ。」



いつもより聞き分けのいいエース。


初めて電伝虫を使うせいか、あまり違和感を感じないゆい。

ははっと暢気に笑っている。


昨日から会っていないせいか、無償な嬉しさに掻き消されているのだろうか。



電伝虫は再び喋り始めた。



「あ〜、ところでよ?」



「ん、どうしたの?」



「ここだけの話だけどな、今俺はタチの悪ぃ海賊に捕まっちまって…。」



「え……!?
え、え、え!??
どっちが捕まってるの?海賊?エース?」



「俺がだ、エースがだ!」



「え…海賊に?海軍じゃなくて?」



「か、海軍にぃ!?」



噛み合わなくなっていく会話。



手元の電伝虫は汗がだらだらだ。

これを電伝虫の具合が悪いものだと勘違いするゆい。


使ってなかったから、きっと疲れたのだろう。





 








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