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いつかの星屑ターミナル(1/3)








何百…いや、何千何億ともある星の下、モビーディック号はいつもと変わらない夜の海に浮いている。

見上げれば輝く星達の間で最も存在を促す掛けた月が浮かんでいる。


ゆいは静かな甲板で一人、何かに取り付かれたように夜空を眺めていた。



今日は宴で、船尾であるこことは反対方向の船の頭に行けばまだ飲み比べをしているクルー達が騒いでいるのだろう。

お酒を飲めなければ、特に凄い量を食べたりしないゆいは直ぐに暇になってしまう。


いつも一緒にいるエースは、今日はサッチや先輩達と大人なお話で盛り上がっていて…

まあ、簡単に言えばからかわれる気がしてならないため、今はこうして大人しくしているのかもしれない。


下手に部屋へ戻ってしまうと、まだ皆が起きているというのにエースとあんなことやこんなことになるかもしれない。



最近、一人でぼーっとする時間がなかった気がするから、これはこれで新鮮な気持ちだ。



星を眺めいれば、不思議と世界が広く感じる。



「……嫌だなあ、」



「なにが?」



「なにがって……ほら見て、星とかが小さいと……って、エース!!」



「お前、結構 鈍感だよな?」



「う、うるさいですー、
いっつもエースといるから、全然違和感なかっただけですー!」



「どうだか、」



いつの間にか隣に座っていたエースは、こちらをチラリと見てニッと笑った。


本当にエースは自分を馬鹿にする天才とも言えよう。



エースと目が合えば明から様に逸らして、ムスッとした顔をしてやる。

この行動も結構お決まりのパターンだったりする。


違う反応をすれば、エースがどう対応するのか…。

気にならないことはないけど、そんなに応用のきいたことを嘘も上手に吐けない自分が咄嗟にできることはないだろう。


よって必然的にこの行動になってしまうわけだ。



でも、そんな自分にも有利なことだってある。

頭の回らない自分を気遣ってか、それともエースの頭も回らないのか…まあ後者はないとして、エースの行動パターンも常に一緒。


こういう時は絶対に…



「拗ねんなよ、」



エースの手がゆいの肩を掴み、ぐいっと立派な胸板へと引き寄せた。


そして軽く額に唇をあてる。



こうされたら、何故か怒っていられなくなる。

何回されたか解らないくらい、こうして機嫌をとられてしまっているのに…怒りよりドキドキでいっぱいになる。



「別に鈍感でもいいんじゃねぇの?」



「…?」



「いや、寧ろ鈍感な方がゆいらしいしな?」



「何それ…全然フォローになってないしっ
それより鈍感を否定しようよ?」



「残念だがそれはできねぇな。
俺は嘘が吐けない正直者なんだ。」



「…どうだか、」



んっとエースの視線が飛んで来る。

エースの言葉をそっくりそのまま(言い方と視線までそのまま)返してやる。


そして、ちょっぴりどや顔をしてみる。



あーあ、エースにこんなことしたら後で何が待ち受けているか分かったもんじゃないのに。

でも、今気分がすごく良かったり。


エースが良からぬ事を口にする前に話題を逸らしてしまわないと…!





 








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