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嘘を巧く並べただけ(3/3)








「…エース、わたしが食べた……の、」



シュークリーム…、

震えている唇が誘惑的で、それに誘われるままにエースは軽くゆいに唇を押し当てた。



唇を離せば、ゆいはエースの人差し指と中指をきゅっと握った。



「だから、わたしのこと……信じなくなっちゃやだよ……っ」



シュークリームを勝手に食べて、馬鹿みたいな可愛らしい嘘を本気な顔で吐いて、誰が作ったのかもわからない話にのめり込んで泣いて…

…たぶん凄く単純な細胞でできているんだろうな、とエースは感じる。


嘘にすぐに引っ掛かる上に、嘘を上手に吐けないゆい。

ある意味 完璧な人間とはゆいのことであろう。



ニッと笑ったエースはゆいの鼻を撮む。



「ゆいのこと、信じなくなる日なんて来ねぇけどな。」



「ほんと?」



鼻をつままれたまま、籠もる声を躊躇うことなく発する。

ただ真っ直ぐにエースの瞳へと向けられる視線が少し痒いくらいで。

少しだけ信用しきってない不安そうな顔のゆいにしっかり頷くエース。



「ああ、例えゆいがどんなに酷い嘘をついたって、それだけは死んでも保証してやるよ。」



「わたしが何をしても…?」



「一瞬でも疑ったら、お好きな本数分 針を飲んでやるけど?」



「やだ…なんか咽が痛くなってきた…っ」



「はは。
…まあゆいが一人前に隠し事ができるとも思えねぇしな?」



意地悪な表情を浮かべ、下からゆいを覗いてやる。

そうすれば、エースが大体 想像のついているゆいの表情が見えて。


さっきまで、いつ泣き出すか分からない顔をしていたのに。

今はそんな影はなく、代わりに頬が膨らんでいて。



「うう…できるもん!
さっきだって、本当に空飛ぶ円盤がシュークリーム食べたと思ったでしょ?」



「頬にカスタード付けて焦ってる奴が目の前にいるのに、そんなこと普通に納得するか?」



「で、でも、ちょっと上手な嘘だったよね?」



「…ちっとも嘘っぽくなかったけどな。」



小さい子供でももっと上手に嘘を吐くのに。
そういうところに自分は嵌ってしまっているのかも知れない。


時々 よく分からない感覚。
それが分かり合えた時の嬉しさ。


こんなに素敵な恋人は他にいやしない。



「もしゆいが嘘か本当かわからないぐらい上手な嘘を吐いたとしたら、」



「うん?」



「俺、その日の夜は幽霊に出会える気がしなくもない…かもな?」



イマイチよく分かってないゆいの表情。


それくらいあり得ないという事。

そう付け足した言葉は口にすることはなかった。






end
Loving!Love!Loved!様の
「嘘」より










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