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けれど幸せなインペイシェンス(2/3)








「こんなの、すぐに治るよ。」



「そういう問題じゃねぇ…!」



「じゃあなによ?
エースは助けてくれたじゃない!」



「こんなの、助けたって言わねぇよ!」



バッとエースの視線が上がった。

やっとエースと視線が合ったものの、その視線に言葉に詰まるゆい。



上がったエースの瞳は潤んでいて、ゆいの胸がきゅっと締まる。



こんな顔、エースは絶対に人に見せないタイプなのに。

でも心のどこかで嬉しくなる自分がいたり。



こちらへと伸びてくるエースの手を、拒むことなくゆいは見送る。

包帯に軽く触れ、親指の腹で滲む赤色を優しく撫でる。



「…情けねぇよなあ。
目の前にゆいがいたのに、俺は間に合わなかった。」



その瞬間は、まるでスローモーションの様な時の流れだったのに。

鮮明に覚えている分、間に合わなかった自分が悔しい。



首を静かに横に振るゆい。

壊れ物を扱うようなエースの手を見続ける。



「手の届くところでいたつもりだった。
なのに、こんなに痛い思いまでさせて…」



「痛くないよ…っ」



「痛ェよ。」



速答したエースは、自分の手元にあるゆいの腕へと顔を近づける。


本当はすごく痛い。
疵口だって浅くはない。

こんな傷になれない身体が悲鳴を上げているけど…、


傷を隠す包帯へ、そっと唇を付けるエース。

そして小さな声で言った。



「親父への報告とかは誰でも代わりにできるけどな、お前の傷を俺が代わりに治るまで背負ってやることはできねぇんだ…それが俺にとって何より痛ェ。」



「エース…」



エースの落ち着いた声のトーン。

それは、相変わらず騒がしいはずの医務室から、静かな空間に行ったみたいな感覚をゆいへと運んだ。



「怖い思いだって、今さっきの手当だって…これからの痛みだって、できるなら全部 代わってやりたい。」



「そんなの、わたしだって一緒だよ…っ」



傷とは反対の手でゆいはエースの手をギュッと握った。

今日はちょっぴり小さく見えたエースだが、やっぱり手は昨日と変わらない大きさで。


ゆいはエースの手を握りながら、言った。



「エースの方が傷だらけで帰ってきたり、知らない間に新しい傷いっぱいつくって…その度にわたしだって同じこと思ってた。
もしエースの傷が半分でもわたしに移ったらいいのになって…」



大好きだから、きっとそんなことを想えるんだ。

大切だから、傷ついて欲しくない。


例えいつかは治ると知っていても、見ていて良い気分にはならない。





 







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