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さよならの理由(3/3)








「ゆい…?」



自分の腕の中でゆいが泣いていることに気付いたエースは、腕を緩めてそっと頬に触れた。


もちろん、ゆいがもしもの事を想像していたなんて、エースは知らない。

涙を流しながら、エースに向かって笑顔を作る。



「おはよ、エース。」



「お、おう…って、何か違うだろっ」



エースはゆいの頬に伝う涙を舐めた。

くすぐったいのか、ゆいは笑う。



「ねぇエース…」



「どうした?」



「もしね…もしもだよ?
ほんとのホントにもしも…」



「だー、わかったっ
もしもだな!…もしも?」



ゆいの長い余談をエースは話を進めるように切った。

ゆいは難しそうに口を開いた。



「…もし、どっちかが先に死んじゃったらって思ったらね…寂しくなるね。」



やっぱり、呆れたエースの顔がゆいの濡れる瞳には映った。

ゆいは次に発す言葉が見つからないので、エースの返事を待った。


エースは呆れた顔を優しい顔に変えて、言った。



「それ考えて、泣いてたのか?」



「うん…」



「じゃあ俺も。」



そう言えば、エースはゆいの額に手を当てた。

ゆいは訳の分からないまま、エースを見る。



「もしもだ。
もしも、どっちかがこのベッドで先に死ぬんだったら…ゆいが先だ。」



「え…?」



エースのもしもの話に目を丸めるゆい。


自分が先…?
そんなこと、全く想像していなかったし、エースが何を言いたいのかがよく分からない。


すると、エースは優しく微笑み、言った。



「1秒だけ先にだ、ゆいには逝って欲しい。」



「どうして?」



「お前にこれ以上、独りきりの悲しみなんて味合わせたくねぇからな。」



「!…エースっ」



ニッと笑い、額にあった手がゆいの頭を撫でた。



どうしてだろう。
もしも、死んだら…って話をしているのに、嬉しい。


止まった涙がポロポロと落ちる。



「それに1秒だけここでさよならするのは、来世で違うカタチでゆいと逢うためだからな。」



ゆいから溢れる涙を自分の親指で拭うエース。



「…来世でちゃんと、私を見つけてくれる?」



「自信あるぜ?
…もしゆいが既に他の男のだとしてもな。」



奪ってやる、そう言って自慢げに笑ったエース。


悲しいもしも、しか考えなかった。


ここでいる時間も大事。

でもエースを見ていたら、来世でも逢える気がした。







end

Loving!Love!Loved!様の
「大人の恋愛」より









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