僕の隣、欲しいならあげる(2/4) さっきため息を吐きながら、赤い糸を馬鹿馬鹿しいって言った先輩ナースは、ニコっとしながらゆいに言った。 「ゆいならありえるかも。 どっかのメルヘンな国のお嬢ちゃんな顔してるもんね。」 「あー、わかるわ。 ゆいは考え方もメルヘンだしね。」 「エース隊長も髪の毛がメルヘンな感じでお似合いよ。」 「メルヘンって、褒められてる気がしませんよ! ってかエースの髪の毛はただのくせ毛ですから!」 「そう? メルヘンの国の王子様っぽいわよ?」 「ないないない!」 エースがメルヘンの国の王子様…っ あんなにドSで変態なエースにメルヘンもくそもない。 夢を壊すだけだ。 次々と出て来る、メルヘンと関係ないエースの特徴をメルヘンと繋げていく先輩達。 上半身裸はメルヘンの国では普通だ、とか、メラメラな感じがメルヘンチックよね、とか… 全く意味が分からない言葉にからかわれ続けるゆい。 するとまた、いつものタイミングでドアが開いた。 ドアから入ってきた人に、思わずナース達は笑ってしまう。 ゆいですら、メルヘンの国の王子様に向かって笑ってしまった。 「…なんだ?」 入って来れば、いきなり笑われるエースも困っている。 何が起きたのかはわからないが、自分のことで笑われているのは確実だ。 「…王子様のお出ましよ、ゆい。」 笑いを堪えながら先輩はエースに指差す。 酷い人だ、まるで後は任せた…と言っているようなものだ。 ゆいは紅茶を飲み干せば、立ち上がってエースの隣に行った。 医務室を出れば、ナースの笑い声が聞こえる。 堪えていたのは解っていたが、まさかこんなに笑える話だとは。 医務室の扉を見て顔を歪ませるエース。 「ナースの姉ちゃん達と何話してたんだ?」 エースの部屋へと歩き出せば、やっぱり聞かれた。 どこから話せばいいのか…と迷う。 「…エースはメルヘンの国の王子様なんだって。」 「はあ?」 はあ?って、ほんとに思う。 メルヘンのカケラもないエースが、住民どころではなくて国の王子様だなんて。 ← | → |