俺なりの言葉(1/3) 「はぁ……」 エースの部屋を、まるで自分の部屋の様に入って来るゆい。 テーブルに向かい、書類と格闘するエース。 その横のベッドでゆいは寝そべり、頬杖をつきながらエースを見る。 そして一つだけ、幸せそうなため息。 全く集中できないエースの眉が額に集まる。 足をバタバタとさせ、どこかに気を飛ばしてしまったゆいは馬鹿みたいに惚気顔だ。 こんなの、堪えられるかッ! 書類を書かなければならない上に、ゆいからの視線が横から刺さるなんて、やってられない。 「…おい、ゆい。」 「なあに〜っ」 返事はするものの、絶対にゆいの頭はここにはいない。 そんなゆいの隣に座る。 ベッドが沈み、頬杖をついたゆいの肘が崩れる。 「うあ、なにエース?」 「なに、じゃねぇよ。 さっきから人のことジロジロと見やがって。」 「は…っ、いけない!」 「わざとらしい台詞だな、おい。」 ゆいはんっと唸って、寝そべった体を起こす。 そして、エースにもたれ掛かった。 「先輩がね、白雪姫の話をしてくれたんだよ。」 「白雪姫、て毒林檎の婆さんが出てくるやつか。」 「何でそこチョイスするの!?」 小人さん、とか、白馬の王子様、とかあるじゃんか! と言うゆい。 結局、伝わったからいいじゃねぇか。 そんなことを思うエースは口にはしなかった。 「素敵だよね!」 「…そう、だな……」 「う、解ってないな〜、」 つか、これはゆいと解り合える内容の話か? どちらかと言えば、ゆいの方が話のチョイスをミスってる。 「災難な奴だろ、明らかに白雪姫が。」 「で、でも眠ったから白馬の王子様が迎えに来たんだよ?」 「ただの通り道だったんだろ? 起きててもそこにいたら会えたじゃんかよ。」 「!そんなのロマンチックじゃないじゃん!」 ムッと膨れるゆいの頬。 ← | → |