見せかけ草食系(1/5) ゆいはドアもとに立って唖然とした。 なぜなら… 「どうしたの、エース…」 そこにいた彼の見慣れない姿。 エースの部屋を開ければ、彼は床に座っていた。 そこまでは良かったのだが。 「ん?なにがだ?」 こちらを向いて、何事もなかったかのように問うエース。 何が、とかいう次元の問題ではない。 何故彼は… 眼鏡を掛けて本を読んでいるのだろうか。 自分の目を疑ってしまう。 本など読むエースの姿をこれまでに見たことがない。 寧ろ、単細胞だと言い切れるエースに、本が読めたのだ…と言いたいぐらいだ。 それに、眼鏡も眼鏡だ。 これも初めて見た。 黒縁眼鏡がまさかエースにこんなに似合うと思ってなかった。 エースと目が合えば、すごくドキッとなる。 いつもと明ら様に違う雰囲気を醸し出すエースに、調子が狂いそうだ。 「どうしたの、その本に眼鏡。」 「話してやるから、とりあえず中入れよ。」 おかしな奴だな、と笑うエース。 ゆいからすれば、今日のエースの方がよほどおかしいが。 会話をすれば、意外といつものエースだったので、とりあえずホッとする。 衝撃的で、ドア元に突っ立ったままのゆいは、ひとまずエースの部屋にお邪魔した。 ← | → |