「ほな、帰ろうか」 「うん」 少し肌寒い。マフラー、持ってくればよかったなあ。せめて何かないかな……あ、そういえば今日の家庭科でカップケーキ作ったんだっけ……。 「白石くん、手だして」 「ん?」 「これ……よかったら食べて」 「カップケーキ……?」 そう言って手の中にあるカップケーキを興味津々という感じでみつめている。 やがて視線をこちらに向けて嬉しそうにして 「おおきに。……今食べてもええ?」 「え、うん。」 「ほんじゃ、いただきます」 ……うわ。食べてる。実は味見してないんだよね。大丈夫かな……。 「……どう、かな?」 「めっちゃ美味いで!川上さんみたいな彼女を持てて俺は幸せやな」 「それは、ちょっと大袈裟な気が……」 「そんなことあらへん。やって俺、川上さんと付き合ってから充実してるなあって思うようになったんやで?」 ちょっと、いや、かなり驚いた。白石くんが私と同じことを思ってくれてたなんて。 「、どうしたん?」 「いや……私も同じこと思ってたから……」 「うわ、めっちゃ嬉しいなあ。」 まいったな。嬉しくて言葉がでてこない。とりあえず笑って返事をした。 「そうだ。明日のデートどこ行くの?」 「『プレリュード』っていうお店なんやけど……」 「あ、知ってる。そこのお店ワッフルがおいしいんだよ。」 「さすが女の子やなあ。そういうのってやっぱ詳しいん?」 「んー…詳しいっていうかワッフルが好きなだけなんだけど……」 「ええと思うで?そういうの」 「あ、ありがと」 「おん」 「あ、私の家ここだから」 「マンションなんやね。そんじゃ明日迎えにくるわ」 「うん、ありがと」 「ほな、おやすみ」 「……おやすみ」 今の言葉を間をあけて言ったのにはわけがある。 白石くんの顔が一瞬、くもったからだ。 ← モドル |