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徐々に思考が狭まっていく
「はは、本当に疲れているのかも…」
歩く速度が自然と速くなる
早く家に帰らなくては
“なんで?”
家族が待っているんだ
“ほんとうに?”
きっと皆祝ってくれる!!
“いままでそんなことあった?”
煩い!黙れ!!
“ねぇ、きみは…どこにかえるの?”
「…え?」
―ザァッ…
一陣の風が吹いた。
「あ…あ………ここ…」
そこは彼の
彼が彼だった頃の家の目の前
「…ここは…どこ?」
―ドサッ
ふらふらと彼は歩き出す。
学生鞄が地に堕ちた事も気にせず。
「僕は…誰?」
虚ろな瞳は光を映さず
後ろに強大な闇を抱えて
深く暗い闇の中に消えていった