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―SIDE 馬酔木 ―
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真っ暗な闇の中
息継ぎの仕方を忘れた
そして僕は…僕、は…
闇に消えた
†††††
「本当に良かったわね、あの有名校の特別推薦枠に受かって!」
担任の教師が少々興奮気味に笑顔で僕にそう告げた。
「はい、ありがとうございます。これも先生のおかげですね。」
僕は笑顔で先生にお礼を言った。
「そんな、これは***君がとても優秀だからよ!あちらから来て欲しいって言われたんだし、もっと胸を張っていいのよ?」
先生はいかに僕が特例で凄いかを力説しているが、僕は別のことが気になっていた。
『今…何か…名前…ちゃんと呼ばれたていた?』
呼ばれた筈の自分の名前が、上手く理解に繋がらなかった。
そんなことをぼーっと考えていると、先生が自分の顔を覗き込んでいた。
「あぁ、やっぱり受験で疲れたわよね?もう今日は帰っていいから、ご両親にも報告してらっしゃい!」
先生はそれを受験疲れと受け取ってくれたらしく、そして僕は早退することになった。
†††††
「あぁ、はい、じゃあ徒歩で帰ります。え?いいですよ、もう18ですよ?そんなに遠くもないですし…はい、では」
迎えの車は今来れないらしい、待っていては早退の意味もないし、歩いて帰ることにした。
「お?***もう帰るのか?」
「そういや***推薦受かったんだってな、おめでと〜」
「***君、バイバーイ」
「ありがとう、ごめんね、先に帰るよ。うん、皆またね。」
帰る途中、クラスメイトに声を掛けられた。
しかし
やはり名前が…何故自分の名前を認識出来ないんだろう?
寧ろ…
「僕の名前…は…?」