胸騒ぎがしていた

それは日を追うごとに募った


彼から離れているからだと理由をつけても、
それは重く鉛の様に心の奥に溜まっていった


「明日には帰れるな…」

鵲は仕入れやら何やらの仕事を終え、宿で帰り支度をしていた。

愛しい人からの手紙を読み返しながら…

毎日うっとおしいだとか、金の無駄だとか書いてあるのに、

最後には必ず…“早く帰って来い”

「鴫らしいね〜」


鵲は鴫を愛している。

鴫も自分を愛してくれている。

この幸せは、続くものだと信じていた。

「よし、支度が済んだし…え?」


刹那、声が聞こえた…


声にならなかった叫びが…


愛しい人の鵲に向けた叫びが…


―愛して…る…よ…鵲…

最後に…お前に会えな…い…のは…

寂しい…寂しいよ…会いた…鵲…―


瓦礫の下のぼろぼろの身体

虚ろな瞳から落ちる涙

彼を求め手を伸ばし、

その手すら墜ちた


鵲は知る、それが今起きている事実だと


「あ…あ、あぁ…嫌だ、こんな、嘘だ!!」

鵲は絶叫する、これは事実ではない。

彼は今日もいつものように仕事をしているはずだ。

しかし、彼は気付いていた。

「鵲さん、大変です、街が…街が…」


“あぁ、これは悪夢なのだろうか”



心の奥に落ちた黒い黒い鉛の様なものが


弾けた気がした







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