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そして“その日”は訪れた。
「“明日には帰ります”…か、毎日手紙を送り付けてからに…」
あいつは毎日欠かさず手紙を寄越した。
よほど離れたくなかったのだろう…
「あら先生、何かあったんですか?偉くご機嫌ですねぇ」
「いや、まぁ…はは…」
そう、私は明日には帰る愛しい人に
どうやったら照れずに
寂しかったと言えるかなんて
そんな下らないことを思案していた
そんな思案の最中、患者が話かけてきた。
「最近ここらも不穏な空気ですよねぇ…○○は爆撃されて街が壊滅したとか…ここいらはどうなのかしらね?」
「確かに…」
今、この国は内乱状態にあり政府側と民衆側との戦争のようなものが起きている。
そして、政府は軍事力にものを言わせ、反乱分子の除去の為にと理由をつけては街を壊滅させていったのだ。
午前の診療を終え、鴫は一息入れようとしていた。
しかし、地鳴りのような音と人々の声が気になった。
それは段々と近づいてきていたのだ。
「街が騒がしいような…っ?!」
そこに広がっていたのは正に地獄絵図であった。
街の端からじわじわと爆弾を落とし、人々が中心に集まるように誘導し、そこに銃撃を浴びせ、爆弾を落としていたのだから…
「こんな…こんなことが…」
鴫は絶望した。
目の前で死に逝く人々
焼けていく街
今まさに自分の上に投下された爆弾
しかし、
それらより
何よりも
彼を絶望させたのは…
「あぁ、こんなことなら…こんなことになるのなら…」
その先の言葉を発することは、
彼には出来なかった…
―愛しい愛しい貴方に
もっともっと“愛している”と
素直に言っておきたかった―