―…ぃ―



―しぃ…―






「椎、起きなさい」


「…んん、兄さん?」



其処はいつもの床闇館


そして起こすのはいつもの人


自分とほぼ同じ姿の兄


どうやら夢を見ていた様だ。


遠い遠い日の記憶


消し去りたい忌まわしい過去




「随分懐かしい夢だったね?」


「ん〜うん、かなりね!」


僕らは繋がっている

ある程度ならお互いの事も分かる

ん〜っと言いながら椎は大きな欠伸をしながら伸びをする。
片割れたる兄が次に何を言うのか解っているから…


「ふぁ〜あ、僕としてはもう一眠りしたいんだけどなぁ?」

「駄目だ、これから仕事だ」

「チェー」

「解っているだろうに」

「まあね♪」






兄の白樫


弟の僕



本当は僕らは一つ

寧ろ僕だけが本当



白樫は本当は…

僕が造り出した闇なんだそうだ。

だから僕の暴走が収まれば

消える運命だった。



だけど

だけど、あの時

僕が母親を殺そうとしたあの時

現れた水鶏様に…


僕はお願いをしたんだ






兄さんは僕の闇だから消える運命だと水鶏様は言った。


兄さんもそれで良いと言った。

僕の暴走が収まると兄さんは消える。

だから僕は泣きながら水鶏様にお願いをした。



「兄さんがいなきゃ死んでやる!兄さんも一緒じゃなきゃ嫌だ!!」

必死だった。


「兄さんを助けて!!そしたら何でもするから!!!」


だって大好きな兄さんだった。


僕を守ってくれた。

だから今度は僕が守る番だ。


「兄さんを…兄さんを…殺さないで!!兄さんにはずっと僕の側にいて欲しいの!!!兄さんを…兄さんを助けてー!!!!」


水鶏様はじっと僕の目を見ながら答えた。

「…あい分かった、お前がそこまで言うのなら特別にそやつも闇者にしてやろうぞ。しかしな、お前の…本当の名前は未来永劫喪われるが良いのか?」


「それでもいいよ…兄さんの為なら」








彼らは今日も闇を狩る


二人で一つ


命の恩人たる水鶏の為に


今日も闇に潜んで闇を狩る






仕事に出掛ける途中

ふと、兄は足を止める。


「兄さん?」

「私は偽りの命だが…」


兄は弟に微笑む。


「お前に感謝しているよ?」


それだけ言うとまた兄は歩き出した。


「そっか…」






これが“椎”の物語


二人の椎の物語



sequel…




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