4
―…ぃ―
―しぃ…―
「椎、起きなさい」
「…んん、兄さん?」
其処はいつもの床闇館
そして起こすのはいつもの人
自分とほぼ同じ姿の兄
どうやら夢を見ていた様だ。
遠い遠い日の記憶
消し去りたい忌まわしい過去
「随分懐かしい夢だったね?」
「ん〜うん、かなりね!」
僕らは繋がっている
ある程度ならお互いの事も分かる
ん〜っと言いながら椎は大きな欠伸をしながら伸びをする。
片割れたる兄が次に何を言うのか解っているから…
「ふぁ〜あ、僕としてはもう一眠りしたいんだけどなぁ?」
「駄目だ、これから仕事だ」
「チェー」
「解っているだろうに」
「まあね♪」
兄の白樫
弟の僕
本当は僕らは一つ
寧ろ僕だけが本当
白樫は本当は…
僕が造り出した闇なんだそうだ。
だから僕の暴走が収まれば
消える運命だった。
だけど
だけど、あの時
僕が母親を殺そうとしたあの時
現れた水鶏様に…
僕はお願いをしたんだ
‡
兄さんは僕の闇だから消える運命だと水鶏様は言った。
兄さんもそれで良いと言った。
僕の暴走が収まると兄さんは消える。
だから僕は泣きながら水鶏様にお願いをした。
「兄さんがいなきゃ死んでやる!兄さんも一緒じゃなきゃ嫌だ!!」
必死だった。
「兄さんを助けて!!そしたら何でもするから!!!」
だって大好きな兄さんだった。
僕を守ってくれた。
だから今度は僕が守る番だ。
「兄さんを…兄さんを…殺さないで!!兄さんにはずっと僕の側にいて欲しいの!!!兄さんを…兄さんを助けてー!!!!」
水鶏様はじっと僕の目を見ながら答えた。
「…あい分かった、お前がそこまで言うのなら特別にそやつも闇者にしてやろうぞ。しかしな、お前の…本当の名前は未来永劫喪われるが良いのか?」
「それでもいいよ…兄さんの為なら」
‡
彼らは今日も闇を狩る
二人で一つ
命の恩人たる水鶏の為に
今日も闇に潜んで闇を狩る
‡
仕事に出掛ける途中
ふと、兄は足を止める。
「兄さん?」
「私は偽りの命だが…」
兄は弟に微笑む。
「お前に感謝しているよ?」
それだけ言うとまた兄は歩き出した。
「そっか…」
‡
これが“椎”の物語
二人の椎の物語
sequel…