この二人の出逢いの後、

子供は自分を椎と名乗る様になる。


そしてそれを機に―

とても奇妙な子供となった。




普段は大人しく優しい面倒見の良い子供なのに…


何か楽しみを前にすると


傲慢で我儘で自分勝手な子供

となるのだ。



母親と父親は子供の余りの変化に驚く事しか出来ない。


彼らには何も分からない。


しかし、“彼ら”には分かる


何が起こっているのかが…






―椎…宿題は?―


「兄さんがやっといてよ」


―椎…学校は?―


「体育以外は兄さんやって」


子供は頭の中の彼を、自分より早く産まれた筈だからと“兄”と呼ぶ様になった。

頭の中の彼もその子供を“椎という弟”と思うようになった。


二人は子供の躯を交代で使う。


弟は楽しい事だけを…

兄はその他全てを…









次第に意識がせばまる


弟は快楽を


兄は弟の満足を



“ミタサナイトイケナイ”



「楽しくない事なんて何もいらない!!!」


―椎…じゃあ他の事は全部僕に任せて?―


「うん、うん…兄さん…」



歪む二人


二人は闇




―椎につまらない事ばかりさせようとして―


「つまらない!!助けて!!!」


―皆皆つまらないなら―


「何も楽しくないよ!!!!」



『『消えちゃえ!!!!!』』





―闇が弾けた―


溢れる闇は“彼ら”を蝕む


そして、周りにまで危害を及ぼす

―それは…母にさえ―




「椎…貴方今年受験でしよ、勉強はどうしたの?」


『つまらないからしない』


「どうしたの、突然?」


『もっと楽しい事がしたいの』


「もう子供じゃないんだから、ダダをこねずに勉強しなさい!」



『嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…』


「し、椎?」


『消えちゃぇぇえ!!』




真っ黒な…闇


家族にだって及ぶ


それが闇







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