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「遅れてすまなかったね」
その声は静かに凛と響く
白銀の流れる様な髪
碧く澄んだ美しい瞳
正しく美少年と呼ばれる相貌
散りゆく木蓮の木に
白銀の騎士が立っていた
「…ゎっ、キザっ…」
椎はそんな彼の登場に
満身創痍の癖にブッと吹いた
「それだけの状態で軽口を叩くくらいなら大丈夫そうだな、椎?」
その少年もまた、そんな椎を見てニヤリと笑った。
「あはは、何とかね…でも、まさかラナが来るとはね…」
そこに現れた少年の名は
ラナンキュラス。
床闇館の闇払いの一人
その能力の高さもさることながら、更に彼は闇のコントロール能力が高い
「まぁ、これだけの膨大な闇を散らさないといけないのなら僕が適任だろう?水鶏も今忙しいみたいなんでね…」
馬酔木を無視して涼しげな会話をする2人
因みに馬酔木も
そんな2人を完全に無視して
椎から離れ、穢れた闇の中
静かに何かを呟いていた
そして、椎はふと
自分の片割れがいないことに
気付いた。
「兄さんはやっぱり保たなかったか…」
椎が木蓮の制御に全神経を集中させたことにより、白樫は姿を保てなくなり闇に融けた。
「あぁ、だが大体の話は聞いたから大丈夫。」
ラナは椎のそばに降り立つと同時に、椎に闇が絡み付く
「少しじっとしてろよ、すぐに治すから」
ラナの闇が
椎の体の傷を癒やしていく
闇者の場合のみだが、闇によって受けた傷を治せるのはやはり闇なのだ。
「ふぅ、ありがとう…ってあれ?馬酔木は?」
ようやく体が動くようになった椎は馬酔木の不在に気付いた。
そんな椎に苦笑いしながらラナはビルの隙間の闇が濃い部分を指差す。
「あっち。何かあいつおかしいよ…先程から全くこちらに攻撃をして来ない。しかも、闇を取り込んでいると言うよりは…何だろ…」
ラナは馬酔木の様子に違和感を覚えた
こちらに攻撃をして来ないこともだが、何より馬酔木が闇を拒んでいるような…
とにかくそんな様子なのだ。