「…消えてしまえ…」


「あっ…ぐぅっ…ぁ…」


虚ろな馬酔木の瞳
無機質に力を加える手


その手の中には子供の首
子供は闇を掻き消され

最早抵抗する術を持たない



「あの子だけでも守らなくちゃね…」


椎はそう呟くと精神を集中し
闇を集め始めた



「…闇の徒花…叢生木蓮!」


椎の闇が美しく咲く
大樹から伸びる蔓と花

「よいしょっと…」

子供を蔓で絡み

馬酔木から奪い

木蓮の花の中に隠す


「…ぁ…」


子供を奪われた馬酔木は
酷く落胆した表情のまま
しかしその手の力を緩めない

―ブシュッ

馬酔木の両手から血が流れる

―ポタッ


「あは…あはははは…」

自らの血を浴びながら
馬酔木は狂った笑みを浮かべ


玩具を奪った椎に

敵意を向けた



†‡††‡†





「こっからは持久戦かな…」


椎はチラリと木蓮を見やる
中の少年は気絶しているせいもあってか闇を暴走させる素振りを見せない。


「闇払いは済んでるみたいだし…あとはあの子を守りきれば勝ち…かっ!!!」


馬酔木が椎に闇を放つ
椎はそれらを軽くいなす


「死ね!…ふふふ、皆まとめて殺してやる…あはっ…あはははは!!」


馬酔木の闇はどんどん膨れ上がり、椎に襲い掛かる


「あ…不味いなぁ…木蓮を保つので精一杯な感じかも」


馬酔木が周りの闇を吸収し始めているせいで椎の力も弱まってきているのだ。


―シュッ


「ぐっ!!…しくった…ちょっとヤバいかなぁ?」



木蓮に意識を向けた一瞬


その一瞬で


椎は片足を闇に持ってかれた


痛みはない
痛覚を消したから

血すら出ない
血を通わないようにしたから



「不味い…闇が…!!」


しかし更に困ったことに、足にまとわりついた闇が椎の体に絡み付き拘束する

「あは…あはは、捕まえた…捕まえたよ…ふふっ、あはははは」

馬酔木はフラフラと椎に近付き
彼の首に両手をかける


「あーあ…せめて木蓮と兄さんだけは…保たないと…ね…」


ポツリと呟き、椎は目を閉じた







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