ビルとビルの隙間
そんな小さな小さな闇の中


蠢く複数の影があった



「そっち行ったみたい、椎!」

「えー?うわっ!何か認識し辛いなぁ、子供だから?」


「…ちょこまかと…」



闇から闇に響く轟音と声

都会のど真ん中なのに

その音は人々には届かない



「馬酔木ー、怒らない怒らない☆」


馬酔木と呼ばれた青年は
その声の主の方向に闇を飛ばす

「ぎゃー!馬酔木!ぎゃー!!兄さんたっけてー!!」


「何やってんのさ、馬鹿だねぇ」


そんな彼を笑う青年は
悲鳴を上げる彼と同じ顔


緊迫感溢れる状況なのかと思えばこれ…

ある意味では
いつもの3人になりつつある
彼らなのであった。

今回も闇払いの依頼を受けてやってきた馬酔木、椎、白樫

この3人で組み始めてから
数ヶ月が過ぎようとしていた。

「ぜっはー、危なかったー」

「椎、相変わらず絶妙に馬酔木を怒らせるねー」


「チッ…まだ生きてやがったか…」


「兄さーん!馬酔木がチッて!チッてしたー!!!」


「はいはい、2人とも集中しなさい…全く。」


そんな3人を見て
ふと、子供は立ち止まる
子供の後ろの闇が嘲笑う


「…皆…」


「ん?2人とも静かに!何か言ってる!!」

白樫が2人に叫ぶのと同時くらいに子供が絶叫する。

「…皆皆皆…皆死んじゃえー!!!!!」



―ザァッ



「ぐっ?!!」

「「馬酔木?!」」


子供の闇をまともに受けた
馬酔木は

酷く眩しい光に包まれながら

意識を手放した




††††††††††




「……っっ?」


―ここは…どこだ?


「ママ!今日は夕飯なぁに?」

「ハンバーグよ?好きでしょう?」

「うん!」

「ゆうはママのハンバーグ大好きだもんな!」

「うん、パパも好きでしょ?」
「あぁ、楽しみにしてるよ。ね、ママ?」

「やぁだ、パパまでー!よし、頑張って作りますから待っててね。」


「「はーい」」



―あのガキの記憶か…?


「なっ…馬鹿!そっちは…っっ!」


あの子供が母親を失った時の場面

その場面が繰り返し繰り返し

壊れたテレビのように

繰り返される


「…まま…まま…」


子供の母を呼ぶ声が
馬酔木の脳を激しく揺さぶる







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