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「…ん…」


目を覚ますと先程の路地裏で、心配そうに覗き込む時雨の姿が目に飛び込んできた。


「し…ぐれ…大丈夫かい?」

“あぁ、心配かけたな”


そして、ふと先程までのことを思い出しガバッと起き上がると、馬酔木や残りの四人も立っていた。


「あ、霊慈君起きたよ〜」

「良かったね、馬酔木?」

「…見れば分かる…」

三人がこちらを見ながら話をしていた。
僕はほっとしていた。

目が覚めたら皆夢だったら…

そんなに悲しいことはないから。


「…安藤霊慈君」

不意に先程の三人とは違う人に名前を呼ばれた。

「あ、はい…」

「あぁ、緊張しなくていいよ。俺は阿相、そっちが加藤。」


阿相と名乗った人と加藤と呼ばれて会釈をした人が目の前に立っていた。

「ねぇ、君は霊が見えるだろ?」

阿相はニコッと笑って話を始めた。
しかも今日の天気を聞くようなノリでそんな話をしてきた。

「あ……はい…」

僕はこの人は何が言いたいのだろうかと悩んでいると、

「そんでさ、単刀直入でなんだけどうちに就職しない?」

「あ、え…えぇっ?!!」


そんな爆弾発言をされた。
狼狽する僕を見て、後ろにいた加藤さんが助け船を出してくれた。


「…お前単刀直入過ぎだろ。…あ、あのさ、霊慈君は霊が見えるだろ?それで、俺や阿相も霊とかが見えるんだ。そして、そういうのを専門に扱う科が警察にあるんだ。だけどそういう力のある人は少ない。それでいつも人手不足だから是非霊慈君にうちに入って欲しいって訳なんだ。」


霊慈は目を丸くしてしまう。
今まで自分をあれほど苦しめたこの能力を仕事にしている人に出会えた。
しかも、そこで働かないかとお誘いまで貰えるなんて…


「…駄目かな?」

加藤が沈黙を拒否と捉えようとした時、思わぬところから声がした。

「そいつは入る…だろう?」

馬酔木がいつの間にか霊慈の側に立っていた。
霊慈は馬酔木の方を見て、時雨の方を見て、頷いた。

「僕なんかで良ければ…喜んで!!!」


この日僕は、暗くて長いトンネルから抜け出したような気がした。

時雨は横で嬉しそうに笑っていた
空をを見上げると、太陽が輝いて見えた




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