17
門を抜けて路地裏に入る。
ひっそりと静かなそこにたどり着いた時、
馬酔木はため息をついた。
馬酔木は大学から歩いている間、ずっと闇に耐えていた。
愚かな人間達の暗い“闇”と
初めて感じる異形のモノの歪んだ“闇”に
霊慈はため息を歩き疲れたととったらしく、大丈夫ですか?とか言っている。
すると、その路地裏に新たに四人の男性が現れた。
「あ、あなたたちは?」
霊慈が怯えて後退ると、馬酔木が霊慈の前に立った。
「なんだ、お前ら来たのか…」
馬酔木はしかめっ面でぶっきらぼうに彼らに声をかけた。
すると、四人のうちの一人が笑いながら声をかけてきた。
「そりゃあね、馬酔木と霊慈君が心配だったからね〜」
その人の後ろにそっくりな人がいたことに霊慈は驚いた。
「…双子?」
つい、口から考えが漏れていたらしく、時雨に“喋ってるぞ”と小さく怒られた。
「まぁ、そんなもんさ〜☆お、後ろにいるのは侍っぽいね〜、武士だ!凄いね、兄さん!」
そんな霊慈と時雨のことをあまり気にせずに兄さんと呼んだ人の方に話しかけている。
“あぁ、この人達は僕達のことを理解してくれているんだ…何だか嬉しいね、時雨…”
時雨だけに聞こえるように霊慈は心の中で喋りかけた。
“そうだな、良かったな…っ!…な…きさ…霊……慈……”
時雨は霊慈に笑いかけたが、次の瞬間、苦悶の表情と共に霞の如く消え去った。
“時雨?…時雨!時雨!どうしたの?”
時雨の気配を感じられない…
焦った霊慈が馬酔木の服を掴んだ。
「あの、時雨が…時雨…が…」
真っ青な僕を見て、馬酔木が驚く。
しかし、すぐに納得したらしく霊慈の肩を掴んだ。
「…大丈夫…」
その先の言葉を霊慈は聞くことは出来なかった。