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僕は今かなり困ってます。

突然現れた美青年に手を引かれ、
大学から外に出る門に向かって歩かされています。
彼の中性的で不思議な美しさに人が振り返り注目を浴びているのに彼は全く興味がないらしく、スタスタと歩いて行きます。

居心地の悪さと彼の真意を知りたくて彼に話しかけようとした時、
僕はまだ彼の名前を知らないことに気付いたのでした。


「あ、あの…」

「…何だ?」

その人は僕の手を引くことと歩くことは止めないまま、此方を見た。


「あなたの名前…を知らないなって…!」

その瞬間、驚愕したように目を見開いた彼を見て、何か悪いことをしたのかと臆病な僕もびっくりしてしまった。

すると、彼はすぐに照れたような困ったような表情で声をかけてきた。


「…あ…いや、そう来るとは思わなかったから…俺は馬酔木…」

「あ、僕は霊慈です。」


彼は何故か名前だけ言ったので、僕も名前だけにした。


“霊慈、私の紹介はないのか?”

ブスッとした声で時雨に話しかけられた僕は馬酔木に彼を紹介した。


「フフ、時雨ごめんね?あ、人に紹介するのは初めてなんだけど、僕をいつも守ってくれている時雨です。」

「…そうか…」

馬酔木は時雨を見ると、了解したと頷いた。

初めて自分の世界を共有してくれる人に出会えた僕は、嬉しくて後ろでざわついているものがいることに気付かずにいた。




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