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「せぇぇぇんすぅぇぇぇええ!!!!!!!!」
キキィッという音がして地響きは鳴り止み、甲高い声と共に女性が飛び込んで来た。
「先生ぇ!!置いてけぼりなんてあり得なぁぁあい!!」
「山茶花、さっさと手伝え。ほら、お前はそっちを消毒しろ。」
決して動じない、寧ろ使う鴫先生。
「はーい☆」
そしてやはり動じない彼女は山茶花。
鴫の助手として看護師をしている。鴫のメスのような発言をものともしない図太い女性。
よく叫んで煩いので、鴫に叱られる。
「何この子ありえなぁぁぁぁあい!!!」
馬酔木の身体を見てムンクの顔で絶叫!
「……煩い……」
鴫はそう呟いて眉間に皺を寄せるが、確かに…と考えていた。
馬酔木の身体には臓器が入ってるのかどうか微妙なくらいに細い。それに顔色も悪い。
今生きているのが不思議なような身体だ。
「何より傷か…」
「傷がどうかしたのかえ?」
水鶏が鴫を覗き込む。
鴫は水鶏の顔を押し除けつつ答える。
「傷の付いた年代が区々なんです。多分幼少より何らかの形で虐待を受けていたと考えられます。しかし…」
「む?」
「最近のものは本人だと考えて間違いないでしょうが、付け方が区々なんです。深かったり浅かったり…」
「ふむぅ、多分それは精神の乱れよのぅ。」
「彼の闇の原因は虐待なのでしょうか?」
「そうなんじゃろうが…何か腑に落ちぬのじゃ。何故かこやつの闇は落とせない。」
「彼は闇払いではないのですか?」
「そんな筈はないと思うのじゃが…闇孕みの可能性の方が高いのじゃ」
水鶏は扉の前に移動する。
「椎、白樫、儂はちぃと調べ物をしてくるのじゃ!馬酔木が何かしそうになったら呼んでくりゃれ。」
「「かしこまりまして」」
水鶏はそのまま闇の中に消えていった。