3
―バタン
二人が言い争い始めて一時間が経過した頃、また扉が開いた。
「…病人が起きたと聞いたが?」
「あ〜先生、こっちこっち!」
椎が手をヒラヒラ振りながらその声の主を招く。
先生と呼ばれた鴫は言い争っている二人の目の前を普通に通り越し、椎の元に向かった。
目の前を歩かれた二人は流石に鴫に気付き、口論を一旦止め鴫に話しかけた。
「あ、鴫先生…」
「おぉ、鴫か!助けてくりゃれ〜!白樫が儂の事を虐めるのじゃー」
「水鶏様!!!!!」
また二人が言い争いを始めようとするが…
「お二人とも!これ以上煩くするようなら部屋から出ていただくか口を縫い付けますが…如何致しますか?」
そう言うと鴫は二人の方を見る。
「「すみませんでした」」
「よろしい」
鴫はこの床闇館で唯一の医者である。
そして恐しく強い。口では誰も敵わない。
彼は言葉で全てを捩じ伏せられるのだ(笑)
「で、患者は?」
「これこれ」
椎は馬酔木の腕を掴んでブラブラと振る。
「…細過ぎはしないか?」
「うわっ本当だ!!!」
椎は驚いて手を離すが、馬酔木の腕は軽い音をたてて布団に乗るだけだった。
露になった腕には擦過傷や火傷といった傷が多く、正常な皮膚が見当たらないんではないかと思わずにはいられない程だ。
「それに傷が多い…とりあえず消毒から…」
さっさと仕事を始める鴫。
その時、廊下から地響きの様な音がし出した。
そして…