愛妻×アルバイト
エネルギーの源。今日分の団子がなくなってしまったので行きつけの団子屋で団子を補給。仕事に戻るという選択肢がある筈もなく。(ためている仕事もない)明はそのまま家に帰った。
婚約したばかりの愛妻はおめでたい三色団子の抱き枕を抱えてソファーベッドに沈んでいた。
「ただいまフィアちゃん」
「おっ帰りー」
「何見てるの?」
にこりと、笑顔で迎えた愛妻の手元には薄っぺらい一冊の冊子。読んでいたページにはしっかり指を挟んでいる。
「ああ、これ。ん」
何かの情報誌だろうとは思っていたがその雑誌名に明は目を丸してしまう。
雑誌名:アルバイト情報誌求人ジャーナル
「おにーやんがくれた雑誌の中に混ざってた」
「へぇー……でも何でよりによって求人誌」
兄が渡したなら他にもいろいろな雑誌があるだろう。
多趣味な彼はグルメにファッション、インテリアその他諸々。あらゆる雑誌を揃えている。にも関わらず、部屋は清潔感があり整っているのだから尊敬してしまう。
と言うかフリーペーパーまで集めてたのか。
「バイトしようかと思って」
「ワンモアプリーズ」
「バイトしようかと思って」
「この辺時給安いよ」
「むぅ」
「やだ、可愛い。じゃなくて。何でバイト?何か欲しいものでもあるの?」
頬を膨らませて拗ねる愛妻に思わず頭を撫でて明はまじまじと求人誌を見つめる。
「……」
「……」
「……」
「いやいや本当どうしたの。欲しいものあるなら言ってみて。できる限り力になるよ」
「……」
「ていうかもう俺に嫁いでるんだし働くことなくない?お財布一緒だよ。俺、収入安定はしてないけど多少派手な生活しても余裕があるくらいの稼ぎはあるし。子供できても五人くらいは養うよ」
「……日、」
「ん?」
「もうすぐ、明ちゃん誕生日じゃん」
「あ」
そういえば誕生日まであと二週間もない。
壁にかけられたカレンダーの日付を見ても思い出せなかった自分の誕生日を言われて漸く認識した。
「だからさー、プレゼント買いたいなと思って」
「そっか、うん。ありがと」
「まだ何も買ってないよ」
「うん、その気持ちだけでいいよ」
にこーっと柔らかく笑いかけて大好きな愛妻を明はぎゅーっと抱き締める。
「誕生日は出掛けようか」
「二人で?」
「二人で」
「仕事はー?」
「明日休みになるー」
「いいのー?」
「いいのー」
小首を傾げて背に回した手でぽんぽんと明の背を叩くフィアに明は抱き締める力を強くして首筋に頬をすりつける。
そんな明に笑みを溢して、フィアはくすぐったそうに体をよじった。
(でもやっぱ何かあげたい)
(母さんの内職手伝う?)
(一日いくらになるー?)
(壱万円ー)
いちゃいちゃする新婚さんがほほえましくて仕方ない´`*