城の日常

(執筆:瀬世羽様)

広々とした廊下に靴音が響く。
セロネは先ほど城へと戻って来たのだが、することもないため城内を散策していた。
外では、留守中にやって来た敵をめごとひきが倒している最中だ。
「つまらぬ、退屈だ」
しかし、外の様子など気にもせず何か面白いものは無いかと探しまわっている。
階段を登り、廊下を歩いては、違う階段を降り。
気まぐれにセロネは歩いていく。
彼女の両肩ではロネとネロが、主の為に面白いものを見つけようと辺りを見回している。
城の入口へと続く階段を降りていた時、せっせと雑巾掛けをする芭甄が見えた。
セロネは、踊り場で立ち止まり彼を見下ろす。
一つの汚れも見落とすまいと、その姿は真剣だ。
すると、扉からめごとひきが入ってきた。
二人とも至って元気そうだ。
「おいっ、いつも靴底の汚れを外で落として来いって言ってるだろ。床が血まみれになる」
芭甄が二人に気づき慌てて注意する。
「あら。敵を倒してきてあげたのに、感謝の言葉もないのかしら?」
めごが髪を払いながら言い放った。
それに同調するように、ひきが何度も頷く。
「嫌だって言うアンタの代わりに、しょうがなくアタシたちが殺ってきたんだから」
「お前たちは、敵を倒すのが趣味みたいなもんだろ」
「まぁ、心外だわ」
めごとひきは顔を見合わせ頷きあう。
「わかった、わかった。助かったよ。だから、頼むから汚れを落としてきてくれ」
床磨きに熱中し、いい加減に返事をした芭甄が気に入らなかったらしい。
ひきは、思いついたように小走りで彼へと近寄ると、その目の前で床を何度も踏みつけた。
そして、無数の足跡が付いた床を愕然と見つめる芭甄に満足気な顔をして、再びもといた場所へと戻った。
「な、な、何するんだっ。せっかく綺麗に拭けてたのに」
ひきは外方を向いて知らん顔だ。
「拭き直せばいいわ」
代わりに、めごが無情に答える。
「まるで継子虐めですの」
「虐めですわ」
その様子を見ていて、ロネとネロがセロネの耳元で囁いた。
継母や義姉に酷い仕打ちを受ける主人公が、魔女などの力を借りて最後には幸せを掴む。
何処の世界にも似たようなものがある、お決まりの物語だ。
しかし、虐める側があの二人となると、彼が幸せを掴めるかどうか疑わしい。
「仲がいいのは良いことだな」
主人公を助けるはずの魔女さえも、見ているだけで何もする気はないようだ。
セロネは手すりに頬杖を付きながら、面白そうに三人の姿を眺めていた。

―end―




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