家政夫?

(執筆:朱璃翼様)

彼は今日も同じ日課をこなす。
 彼の朝は誰よりも早い。まだ皆寝静まっている頃に起き、掃除をする。広い広い城内を掃除するには、かなりの時間を要するのだ。
 しかも、寝ている者達を起こさないよう、静かにしなくてはいけない。起こしたりしたら……、それは考えたくもない。特にこの城の主でも起こしたら……、何をされるか想像もつかない。
 だから、彼はとても慎重に、それでいて隅々まで綺麗に掃除をしていく。
 彼の名を芭甄。烈旋の仙術士 芭甄である。
 この城の主であるセロネに忠誠を誓う悪魔の一人だ。
「……ふぅ」
 掃除を終え、芭甄は額の汗を拭う。次は朝食の支度だ。作り終えれば、セロネをそっと起こす。あくまでそっと起こすのだ。

朝食が終われば洗濯が待っている。
 なぜ彼はこんなことばかりしているのか。それは謎である。彼ほどの悪魔であれば、こんなことをしなくてもいいような気がする。

 芭甄が洗濯をしている頃、セロネは自室で本を読んでいた。
 ふと外を見ると、洗濯をしている芭甄が見れる。
「ふむ……。やはりあいつは家事屋みたいだな」
 一人呟いてから、いや、と思う。
「……家政婦かもしれん。重宝せねばな」
 それはいいことなのか、悪いことなのか。
 いや、重宝されるならいいことなのだろう。

 彼は今日も家事をこなす。忠誠を誓う主のために――――。




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